古い本の魅力。
価値観は変化する。5年も経てば時代遅れになるご時世だ。
「すぐに役立つ○○」は、すぐに役立つが、だいたいすぐに役立たなくなる。
古い本が教えてくれること。
現代でも同じようなことが言われているのであれば、大抵それは真実という事だ。
これは、昭和12年~14年、およそ90年近く前に、天王寺師範学校にて、先生のタマゴ達に対して行われた師の講義記録である。
激動の時代、この頃に重んじられた価値観。
現代にとって違和感を覚えるものもないわけではない。
しかし、ほとんど、といっていい。今の我々の課題も言い当てている。
5つほど紹介したい。
<立志>
「人生の目的とは、自分が天から受けた生の一切を社会の役に立てる、という以外にはない」
→社会に対し、自分はどのような角度から貢献できるのか。それを自覚できてやっと大人になるということ。
<学習>
「学生時代にも、受身的・画一的な忙しさはあるが、社会に出た時の責任感を伴った忙しさとは比べ物にならない。そして学問知識はもっと広く深く要求されるだろう」
「学校が忙しくて、読書などする暇がない、と考える者にどうして社会に出て読書の時間を作れるだろうか。」
→大人になってから、学習しなくなる人が多い事に対する警告。いまこそ「LIFE SHIFT」なのである。
<教育>
「大声で生徒を叱ることは、それ自身その人の貫禄が足りない事の証左だ。先生が偉大な人格であったなら、叱らずとも生徒は心服するはず。」
→自分に自信のない人ほど虚勢を張る。論理的に相手を説得できないから、感情に訴えるという、ある意味逃げに走ってしまう。戦後ならまだしもこの時代にもこのような価値観はあったのだ。
<仕事>
「仕事を処理するうえで、最大の秘訣は『とにかく手を付ける』ことだ。まずは80点級を目指し、最上の出来栄えを、という欲をかかない。いい意味での拙速主義を大切にする。」
「出処進退に際し、もういいやと投げ出す人と、最後まで丁寧にする人との間で、その人の真価が問われる」
→スピードは相手に対する敬意である。引継ぎの丁寧な人も、自分が社会の歯車であって、みんなで仕事をやっているという自覚が出来ているということだ。
<人格>
「そもそも世の中というものは、案外公平にできている。正直な人は報われなくても、結局誰かが見ていて、評価しているものである。」
→どんなに価値観が変化しようとも、正直な人、誠実な人は、最後には報われるものだ。表面上うまくやることも必要なのだが、これだけは動かない真実だと信じる。
古い話なのに、教訓は瑞々しく弾けて、ページをめくる手も軽かった。
「若い時に読んでいたら」と思ったが、若い時に読んで、同じように感じただろうか。
人生の後半戦に差し掛かろうとしたこの時に、この本に出会えたことに、感謝すべきだろう。