ちくわのぴょんぴょん読書日記 ~読書・読書会・哲学カフェ

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主に読書メモ・読書会・哲学カフェについて書いています。

「脳が壊れた」 鈴木大介

<わかってもらえない辛さ>

 

こんばんは。ちくわです。

読書・読書会・哲学カフェが好きです。

新しい事、楽しい事は、何でも試して、失敗して、楽しんで。

 

今日は、脳障害にまつわるルポライター本人の体験談です。

 

 

 <内容紹介 BOOKデータベース より>

41歳の時、突然の脳梗塞に襲われたルポライター。一命は取り留め、見た目は「普通」の人と同じにまで回復した。けれども外からは見えない障害の上に、次々怪現象に見舞われる。トイレの個室に老紳士が出現。会話相手の目が見られない。感情が爆発して何を見ても号泣。一体、脳で何が起きているのか?持ち前の探求心で、自身の身体を取材して見えてきた意外な事実とは?前代未聞、深刻なのに笑える感動の闘病記。

 

◆脳は回復する。

紹介文にある通り、筆者は突然の脳梗塞に襲われ、脳に損傷を負いました。

 

脳細胞の死んだ部分は元に戻ることはありません。 

しかし、脳のある部分を失ったら、その部分が司る体の部位がまったく動かなくなるかというと、完全にはそうではないそうです。

 

残った他の部分でそれをカバーすべく新しいネットワークを作り、補い合うことができるのです。リハビリを続けると、動かなかった部分もある程度動かせるようになるのはそのためですね。

 

筆者はまだまだ若いこともあり失った機能を回復させるべく辛いリハビリに励みます。すると、何十日目かにやっと動かせた!っていう達成感、そして、ここが動けば次、っていうやる気がわいてきます。

 

筋トレは裏切らない、っていう言葉を何故か思い出しましたね。

 

◆高次脳機能障害

幸運にもかなり回復し、生活するうえで基本的なことはほとんど出来るようにましたが、彼には「高次脳機能障害」という障害が残りました。

 

なにかを覚える、優先順位をつける、感情を抑える、などの普段意識も無くやっていたことができなくなったのです。

 

例えば、

両手に荷物を持ってドアを開けようとする時、「一度荷物を置いてから、ドアを持って」という、順序だてて考えることができなくて、軽いパニックを起こしてしまう。

 のような、全く何気ない行動ができなくなるといいます。

 

勉強しようとして、いつの間にか片付けに夢中になっているあの感覚のもっとひどい感じでしょうか。

 

詳細についてはこちらのHPが詳しく書かれていますので、ご参照ください。

www.rehab.go.jp

 

◆生きづらさの正体

筆者はこういった症状になって、日常生活において面倒なことが増えたのは確かにつらかったのですが、最も辛かったのは、「それを他人にわかってもらいにくい」ことだと言います。

 

・優先順位をつけられない。

・覚えられないので同じことを何度も聞く。

・2つのことを同時進行しようとすると混乱する。

・感情が高ぶって大声をだしてしまう。

 

こういった人は、周囲にも見かけることもあって、「障害がある人」とはあまり思われずに、「ちょっと面倒な性格の人」ぐらいの感覚で見られてしまい、その辛さをわかってもらうことができない、ということです。

 

自省すると、やっぱりそういった感覚で見てしまっていましたので、これは勉強になりましたね。

 

◆なってみて初めてわかる

筆者の奥様が、脳しゅようを過去に患っていたことがあり、まさにこういう症状を発していたとのことです。

 

料理の手際が非常に悪いとか、洗濯ものを畳みに行ったのにそれを置いたままテレビに夢中になっていた、とか。

 

それに対し筆者はいつもイライラして怒鳴り散らしていたそうですが、そんな自己中心的なイライラと、自分でカバーしてやろうという完璧主義の性格が、自分の身体に悪影響を与え、結局自分に返ってきたという、皮肉なものです。

 

脳梗塞になってみて、初めて奥様の気持ちが理解できたばかりでなく、理解してもらった奥様はむしろ喜んだそうです。

 

そこで得られた、「めんどくさい人ほど愛らしい」ぐらいで楽しむ感覚、というなんだか心が温まるエピソードでした。

 

他人に対し、「なぜこんなことができないのだろう?」とイライラすることは、私もよくあります。でもそれは、自分ができることだからであって、まったくの自分軸で相手を測っているにすぎません。

 

「善かれと思って」相手の気分を害してしまう、そんなこともありますよね。

 

こういった病気があることを理解し、もっともっと他人に対し理解しようと努力すること。

「エンパシー」を大切にしようと思いました。

 

では、また!