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旧:ちくわのぴょんぴょん読書日記

「おとしどころの見つけ方」 松浦正浩

<「立場」の裏にある「利害」を探る>

 

おはようございます!ちくわです。

読書・読書会・哲学カフェが好きです。

新しい事、楽しい事は、何でも試して、失敗して、楽しんで。

 

今日は、この本。

 

内容<amazonより>

▼サエない会社員が、謎の宇宙人に「交渉学」を学ぶ!?▲

「なんでうまくいかないんだろ……」
「それは、キミの交渉がヘタだからだよ」

サエない会社員、久地米太(くち・べいた)の前に突如あらわれたのは、
交渉で統治された「ネゴ星」からやってきた、アボットとコステロの2人組。
地球人の交渉力を底上げするため、久地くんを鍛えるという。
かくして、異色の「おとしどころ探し」の物語がはじまる……!

 この本は、「世界一やさしい交渉学入門」とあるように、具体例をもとにどこが良くて、どこが悪いかをわかりやすく解説してくれる中で、交渉について学んでいける、そんな本になっています。

 

その中で、何点か印象に残った点をご紹介させていただきます。

 

◆交渉とは、利害のすり合わせ

交渉とは、お互いの利害を満足させること 

であるといいます。

では、「利害」とはどういうことでしょうか。

 

この本では、「立場」と「利害」という言葉を用いて説明します。

 

洗濯機を電器店に買いに行くという場面を例に出します。

 

家の洗濯機が不調だ、家族も増えたしせっかくなので、もっと大きいのに買い替えよう、と考え、

店員に「大きめの洗濯機で、できるだけ早く届けられるやつで」

と言ったとします。

 

この時、

表面的な要求=「大きめの洗濯機で、できるだけ早く届けられるやつで」が「立場」、

背後にある理由=「家の洗濯機が不調だから、家族が増えたから」というのが「利害」ということになります。

 

お店としては、H社製品のリニューアルがあり、旧在庫が多く残っているので店員は「それでしたら、こちらのHメーカー製の9kg用でしたら、人気もありますし、今ならお安くできますよ」と言ってきたとします。

 

表面的な要求=「A社製の9kg用を買ってください」が「立場」、

背後にある理由=「旧在庫を早く売ってしまいたい」というのが「利害」ということになります。

 

双方の利害は最初は表面的にはなっていませんが、対話によって徐々に埋めていき、最終的には双方の利害を満足させるよう、落としどころを見つける、というのが「交渉」という作業になるということです。

 

◆BATNAという考え方

交渉の中で、相手から出てきた提案を受け入れるか、受け入れないかを判断する基準として、「BATNA」を使う

「BATNA」という聞きなれない言葉が出てきました。

「BATNA(バトナ)」とは、「Best Alternative To a Negotiation Agreement」の略で、簡単に言うと「ベストの代替案」ということです。

 

言ってしまえば、「代替案を必ず持っておけ」という至極当たり前なことなんですが、忘れがちなのが、「相手にもBATNAがある」ということです。

 

そして、この「BATNA」こそが、落としどころを探る基準になるというのです。

 

先ほどの洗濯機の例でBATNAをあげてみます。

買う側としては、もちろん、ネット通販や別の家電量販で買えることです。

売る側としては、別に売るのはこの人でなくても、売れれば別の人でもいいことです。

 

もし、すぐに手に入る店舗が他になかったとすると、買い手側のBATNAがなくなり、客を選んでられないほど在庫消化のプレッシャーがきついときは、売り手側のBATNAがなくなるわけです。

 

だから、買う側は、売る側のBATNAを推測することによって、もう一段階値下げ交渉できるかどうかが大きく変わってきます。

 

◆BATNAは相手に知られたら負け

自分のBATNAを相手に知られた時点で、その交渉は「負け」

であるといいます。

 

もし客が、「洗濯機が壊れてしまったんですが、どこもすぐ届けられるところが無くて困っているんです」と正直に伝えたとすると、

店員は、「ああ、この人はどうしてもウチで買ってくれるから、そんな値引きしなくていいや」と考えるでしょう。

 

もし店員が「この洗濯機なんですが、在庫が多くどうしても今週中に売ってしまわないといけなくて困ってるんですよ」と客に伝えたら、逆に「ああ、この店員はもっと負けてくれるかもしれない」と思うでしょう。

 

相手のBATNAを考えるということは、「これが決裂した場合、どうなるだろうか?」を想像してみること

 

というふうに考えると、相手のBATNAは弱点にも変化する可能性があるということで、だからこそ絶対に明かしてはいけないということですね。

 

◆感情的になった時点で交渉失敗

最後に、感情について書きたいと思います。

仕事をしていると、どうしても理不尽な要求や、言葉や態度によって、腹が立つことがあります。

しかし感情が入ってしまって、交渉事が本来の問題と違う方向に進んでしまうと、よくありません。

 

説明を尽くさず強引に推し進めてしまうと、どちらかにわだかまりが残って、長期的な関係にもマイナスになりますしね。

 

感情的になりそうな時ほど、その「人物」ではなく「この交渉が決裂した場合、困るのはどっちか?」というふうに「問題」にフォーカスすることが大切であると思います。

 

◆最後に

この本に書かれていることは、「それだったらいつも気を付けてるよ」というようなことも多いかもしれません。

 

しかし、さすが「交渉学」というだけあって、日常的なことをあらためてはっきりと用語を使って説明されているので、非常に勉強になることばかりでした。

 

ふだんの仕事でも、「利害」や「BATNA」という言葉を常に思い出しながら、もっと上手に交渉できるように練習していきたいです。

 

では、また!