ちくわのぴょんぴょん読書日記 ~読書・読書会・哲学カフェ

読書・読書会・哲学・哲学カフェが好きな人間のブログ

主に読書メモ・読書会・哲学カフェについて書いています。

「発達系女子とモラハラ男」 鈴木大介

<「できない」の理由は、根っこでつながっています>

 

おはようございます!ちくわです。

読書・読書会・哲学カフェが好きです。

この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。

 

今日は、この本。 

 

内容<amazonより>

好きで一緒になったのに
「ふたりが生きづらい」と思ったら
読んでください。
衝撃の「妻の布ナプキンを洗う夫」記事でTwitterトレンド入り!
熱い共感で多くの「ふたり」が涙した鈴木家の物語、最終章。
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発達系女子のど真ん中を行く妻、御年41歳、子ども無し。働く意思もなく自発的に家事をするでもなく、テレビと猫とゲームにまみれて家から出ようともしないプチひきこもり。シングルインカムでワンオペ家事の夫は鬱憤蓄積し、いつしか妻に叱責や暴言をぶつけるモラハラ男に。しかし夫が脳梗塞で倒れ「後天的発達障害」ともいえる高次脳機能障害になり関係性が激変。夫は妻の「不自由」や「苦手」を徹底的に考察し、家庭改革に乗り出す。相互理解の困難と苦しさの渦中にある発達系女子×定型男子のパートナーに贈る、読む処方箋。

◆この本は

 

ボリューム:★★★☆☆(普通)

読みやすさ:★★☆☆☆(読みやすい)

新しい学び:★★★★★(そういう視点があったのか) 

感動   :★★★★☆(愛があふれています)

 

自らが高次脳機能障害を抱えたことにより、発達障害特性を持つ、筆者の妻に対する理解を深め、自分がそれまでに発していた彼女に対する言動を反省します。

その視点の変化と、そこからの暮らし方改革が素晴らしいんです。

 

◆内容紹介

筆者前著の「脳が壊れた」では、

筆者自らの脳障害についての克明な体験記となっていましたが、

 

「発達系女子とモラハラ男」では、筆者の脳障害を経て、発達障害特性を持つ妻との共通点を理解し、「こういう行動」は「こういう障害からくるもの」というふうに、論理的に、科学的に説明しようという試みがなされています。

しかも、専門用語はほとんど使わず、誰にでも理解できるような例えを交えて説明しています。冒頭の漫画がさらにそれを助けてくれます!

 

例えば、「片づけられない」の章、

彼女の行動のベースになっているとされる障害特性

 ・作業記憶(=ワーキングメモリ)の不足

 ・必要のない情報も均等に頭に強制侵入してくる

 ・一度注意を向けたものに、強力に注意が貼りついて引き剥がせない

が、あって、

例えば片付けができなくなってしまうのは、

片付け中、雑誌が目に入る→表紙を無視できず注意が貼りついてしまう→読みふけってしまう→そのうち片づけていたことを忘れてしまう

というふうなメカニズムだと説明されています。

 

菓子の包み紙やアマゾンの箱を捨てられないのも、開けたとたん中身に注意が貼りついて、ごみを捨てるということを忘れてしまう、ということのようです。

 

なるほど、そういうことだったのか。

例えば、ゴミ屋敷になってしまう人は「片づけない」のではなくて、「片づけられない」ということなんですね。

 

そういうふうに、<会話が通じない>、<将来の話ができない>という別の章でも、障害特性を理解し、どうしてそうなるのか、がよくわかるようになっています。

 

そして、ここからがこの本のさらに素晴らしいところなんですが、

障害特性を理解したうえで、「その奥様が活躍できるよう生活を工夫した」ということなんですね。

「指示されたことは真摯に向き合う」「一度取り組んだことはすごく丁寧にやる」などの長所を活かした役割分担が仕組み化されていくんです。

 

◆感想

やはり一番大きなところは、「発達障害特性を持つ方に対する理解」が出来ていなかったことを、自分が気づかされた、ということです。

 

文中でも筆者、は偶然脳に障害を持ってしまったから気付けた、と書いていましたが、当事者になってみないと、

「できている側」から、「できない側の気持ち」を理解することはやはりなかなか難しいと思いました。

体の一部に不自由を抱える方に対し、「遅いよ、さっさとしてくれ」と言うことはありませんが、発達障害特性を持つ人には言ってしまっている可能性があるということです。

 

発達障害というジャンルに限らず、昨今は「モラハラ」という言葉が徐々に浸透し、相手に対する想像力を持った言動を心掛ける、ようになってきているかと思いますが、まだまだ想像力に足る知識が足りていない、と反省するのでした。

 

先日「推し、燃ゆ」を読みましたが、 

推し、燃ゆ

推し、燃ゆ

Amazon

この主人公が似たような障害特性を持っていて、

併せ読むと理解が深まります。

 

当の本人は「やらないんじゃなくて、できないんだよ!」というメッセージをちゃんと発しているのに、受け取る側が「サボリ、怠け」だと、ちゃんと受け取れない(受け取ろうとしない)んです。

 

「世の中、無理ゲー」という名言も、理解できました。

 

皆さんにも、ぜひてにとっていただきたいと思います。

 

では、また!