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旧:ちくわのぴょんぴょん読書日記

「滅びの前のシャングリラ」 凪良ゆう(ネタバレ・やや抑えめ)

<多くの「問い」を楽しむ物語>

 

おはようございます!ちくわです。

読書・読書会・哲学カフェが好きです。

この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。

 

今日は、この本。 

 

内容<amazonより>

「一ヶ月後、小惑星が衝突し、地球は滅びる」学校でいじめを受ける友樹、人を殺したヤクザの信士、恋人から逃げ出した静香。そして―荒廃していく世界の中で、四人は生きる意味を、いまわのきわまでに見つけられるのか。圧巻のラストに息を呑む。滅び行く運命の中で、幸せについて問う傑作。

◆この本は

 

ボリューム:★★★☆☆(普通サイズの長編小説)

読みやすさ:★★★★☆(読みやすいです)

ドキドキ感:★★★☆☆(ハチャメチャな展開) 

感動   :★★★★☆(ジーンとする読後感) 

 

「あと1か月で人類は滅亡する」。その時、あなたはどうする?

小説ではよくある設定ながら、やっぱり心が動かされる永遠のテーマです。

 

◆内容紹介・感想

「あと1か月で小惑星が激突し人類が滅亡する」のニュースをきっかけに動き出す物語、4章に分かれる連作短編の構成になっています。 

 

内容紹介

<シャングリラ>

最初の主人公はいじめられっ子の高校生、友樹。

学校一の美人、超お嬢様の藤森さんに一方的に憧れるも、当たり前のように話さえしてもらえません。そこは格差というもの。

 

藤森さんは東京で行われるアイドル「loco」のコンサートに行くため広島から上京することになりましたが、その直前に「小惑星衝突予定」のニュースが流れます。

友樹は藤森さんを陰ながら守るため、こっそりと東京までついていくのです。ストーカーみたいですね。

 

しかし、新幹線が止まり強制下車させられた新横浜周辺は、暴動・略奪が進みつつあるカオスの世界でした。

果たして、友樹は無事、藤森さんを守ることができるでしょうか?

 

<パーフェクトワールド>

次の主人公は、チンピラヤクザの信士。抗争相手の若頭を殺るというメチャクチャ危ない仕事を遂行した直後、「小惑星衝突予定」のニュースを耳にします。

 

20年前に捨てられてからも、どうしても忘れられない昔の恋人、静香に会いに行きたいという衝動を抑えられず、住所を調べて会いに行ってしまいますが、当の静香はなかなかバイオレンスな母親になっていました!

 

しかし、静香のほうにも事情があって、というのは一人息子が急に東京に出ていったので心配だということ。

なので流れで静香の息子を守るため、ふたりで東京に赴くことになったのです。

 

<エルドラド>

3話目の主人公は、友樹の母親である静香。

信士とともに東京に駆けつけることになり、無事息子の友樹と藤森さんに合流します。

 

もう東京は駄目だから帰ろう、でも広島まで終末の日までに帰れるかどうかわからない。

じゃあ行先はどこに行く?

 

<いまわのきわ>

4話目の主人公はガラッと変わり、歌姫「loco」になります。

大阪から上京し、大物音楽プロデューサーに運良く見初められ、あれよあれよという間に時の歌姫に上り詰めてしまいます。(誰かさんと誰かさんみたいな設定)

 

何もかも手に入れた世界。

けれど、これが自分の本当にやりたかったことなんだろうか?

そんな自問に葛藤していた時、「小惑星衝突予定」のニュースが。

彼女が起こした驚きの行動とは?

そして、いよいよ終末の時がやってくる!!

 

感想

この物語は、死ぬ間際になってできた急造家族のメンバー達、それぞれの道中で発せられるさまざまな「問い」を読者と共に味わっていく、ということが最大の魅力なのではと感じました。

 

「人類が滅びます」というニュースが流れてから、次第に荒れていく街。

思考実験といえる物語設定のなかで、人間たちはどうふるまうのでしょうか?

自分だったらどうするだろうか?ということをやはり考えてしまいます。

 

まず、仕事には行かなくなるでしょうね。自分が仕事に行かなくなるということは、他の人も仕事に行かなくなります。

そうすると何が起こるか?日常生活のほとんどが成り立たなくなります。警察・病院はじめ、電気・水道・通信が途絶えてきます。

そうすると、犯罪が起こってきます。火災が起こってきます。崩壊がはじまるとあっという間な気がします。

そんな世界で自分はなにができるでしょう?何もできず家に閉じこもって震えているしかないかもしれないですね。「やり残したことを、、」なんてとても無理無理。

 

ということは、人間の生活のほとんどは、「明日がある」ことを前提に成り立っているということになります。明日があるからこそ、働き、学ぶ。

その明日が無くなってしまったら、実のところやることなど、ほとんどないのかもしれませんね。

 

この物語では、最後の最後まで、スマートフォンが通じています。必死に働いている人もいるということです。ほかにやることなんてなくて、結局仕事を続けることにした、ということでしょうか。

使命感や責任感ってのは、明日がない前提においても寄りかかる最後の砦なのかもしれませんね。

 

なかなか、楽しませてもらいました。面白かったです!

 

では、また!