<改めて、平等について考える>
おはようございます!ちくわです。
読書・読書会・哲学カフェが好きです。
この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。
今日は、この本。
内容<amazonより>
舞台は19世紀のロンドン。急激な産業化で起こる労働問題や、差別され、苦しむ売春婦の依頼など、コンサルタント業を営む主人公ラシュビーのもとに持ち込まれる問題は様々だ。ラシュビーは功利主義というよく切れる道具を使って、快刀乱麻にこれらを解決していく。だが知らぬ間に連続殺人鬼の恨みを買ったラシュビーの背後には、魔の手が迫っていたーーー。
最大多数の最大幸福を追求する”功利主義”。法学に計量の概念をもたらしたこの革命的な思想をミステリー仕立てで漫画化!舞台は19世紀のロンドン。急激な産業化で起こる労働問題や、差別され、苦しむ売春婦の依頼など、コンサルタント業を営む主人公ラシュビーのもとに持ち込まれる問題は様々だ。ラシュビーは功利主義というよく切れる道具を使って、快刀乱麻にこれらを解決していく。
◆この本は
ボリューム:★★☆☆☆(多くはない)
読みやすさ:★★★★☆(読みやすい)
気付き学び:★★★★☆(考えることは多い)
お役立ち :★★★☆☆(知っておいて損はない)
この本は、ミステリー仕立ての漫画を追いかけながら、ベンサムの「道徳および立法の諸原理序説」を楽しく学べるようになっています。
「功利主義」という言葉は知っていなくても、「最大多数の最大幸福」という、平等と正義に関する言葉はご存じの方も多いはず。そんな功利主義の考え方をマンガ+ミステリー仕立てで「とにかくわかりやすく(ここ重要)」学ぶことができます!
◆内容紹介・感想
古典哲学は、難しいものが多く、私も専門的に勉強したことが一度もありませんので、まだまだよくわからないまま、間違った理解をしているかもしれません。
しかしながら、素人なりの感想も、まぁそれはそれで良いと思いますので、ご容赦願います!
「功利主義」は、実社会に関わりが深いほうなので、まだわかりやすいと思いました!
第1話の「工場リストラ騒動を解決せよ!」では、功利主義の基本概念、幸福計算についての紹介、
第2話の「同性愛者をリンチから守れ!」は、功利主義が宗教や法律にどうかかわりを持つかがわかり、
第3話の「売春婦たちに希望の灯をともせ!」は、幸福計算の合理的思想についてもう少し詳細に入り、
第4話の「切り裂きジャックを炙り出せ!」では、犯罪抑止と功利主義について学べます。
最終章「功利主義の未来」では、功利主義における課題やリスク・誤解について、未来への願いが描かれています。
・現代社会に大きな影響を与えている功利主義
功利主義をすごくざっくりいうと、「すべての人の幸福度の総和が最大化する選択をせよ」ということになります。
少数の力のある人がお金持ちになって、その他大勢の人が貧困になってしまう、「勝者総取り」の世の中は、功利主義の選択としては正しくありません。
だから、富める人はその資産を貧しい人に分け与える、つまり「富の再分配」という概念になります。
これは、法律によって国民の幸福を守ろうとする、現代の政治や税金の基本的な考え方になっています。
・自由か、平等か。
また、法律によって犯罪を防止するのも幸福計算によって説明できます。
犯罪が減ることで国民の被害が減るだけでなく、日常生活の上での「犯罪への不安感(マイナスポイント)」が減ることで、国民全体の幸福度が上昇するからです。
すべての人が平等に幸福を享受でき、万能にも思える功利主義ですが、課題はあります。
それは、「人間の自由」をより強い力で抑えなければならない、ということです。
つまり、「自由」と「平等」はトレードオフになりやすいんですね。
富の再分配ということは、「自分が稼いだお金を税金で取られる」ということなので、いつの時代も嫌われ、逃れようとする者とのいたちごっこですし、
犯罪抑止の法律という面では、法律でどこまで自由な行動やプライバシーを守るか、ということが常に議論になります。
現代社会は常に自由と平等のバランスを取ることに苦心している社会、と言ってもいいと思います。
・極端な話。
功利主義には、極論によって否定しようとするということも紹介されています。
例えば、
「火事の時、1人の著名人と5人の一般人、どちらを助けるほうに行きますか?」
だとか、
「5人を助けるために、隣にいる人を突き落とすことができますか?(トロッコ問題)」
といった、思考実験的な話です。
そこに、
「臓器くじ(一定数の人が臓器提供者になることで、多数の病気の人を救える)」のような、「制度としてあるのは賛成としても、自分がなるのはイヤ」という、
「自分か他人かによって、ことの重大さが違ってくる」ような問題が絡んでくるので、幸福計算とは、どこまでいっても制度化するのは難しい、ということになります。
もともと人によって、また場面によっても感じ方に差がある幸福度の問題を、
「一律に設定するのは難しい、だから功利主義は間違っている」、というのは簡単ですが、根底にある基本理念はすごくシンプルで私たちにも理解できる合理的なものであるので、
「極論はいったんやめて、功利主義の良いところを見直そうよ」
とこの漫画は訴えようとしているのだ、と感じました。
折しも、政治による富の再分配の力が弱まり、経済至上主義により格差が広がっている今こそ、ベンサムの考え方を学びなおすには良い機会なのではないか、とも感じます。
とても読みやすいマンガですので、一度手に取ってみられるのがいいかと思います!
では、また!