ちくわのぴょんぴょん読書日記 ~読書・読書会・哲学カフェ

読書・読書会・哲学・哲学カフェが好きな人間のブログ

主に読書メモ・読書会・哲学カフェについて書いています。

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2」ブレイディみかこ

<相変わらず、よく考えてるよ、息子くん>

 

おはようございます!ちくわです。

読書・読書会・哲学カフェが好きです。

この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。

 

今日は、この本。

 

内容<amazonより>

13歳になった「ぼく」の日常は、今日も騒がしい。フリーランスで働くための「ビジネス」の授業。摂食障害やドラッグについて発表する国語のテスト。男性でも女性でもない「ノンバイナリー」の教員たち。自分の歌声で人種の垣根を超えた“ソウル・クイーン"。母ちゃんの国で出会った太陽みたいな笑顔。そして大好きなじいちゃんからの手紙。心を動かされる出来事を経験するたび、「ぼく」は大人への階段をひとつひとつ昇っていく。
これは、読んでくれたあなたの物語。
そして、この時代を生きるわたしたちの物語――

◆この本は

 

ボリューム:★★★☆☆(普通)

読みやすさ:★★★★☆(読みやすい)

気付き学び:★★★★☆(自分の世界では決して体験できないなぁ)

考える  :★★★★★(息子との問答が素晴らしい)

 

あれから2年。息子くん、もう13歳なんですね。

自分でしっかり考えて、親もびっくりするような発言をする息子くん。今回も素晴らしいメッセージをいくつも残してくれてますよ!

 

2年前の前作の感想は、こちら。

chikuwamonaka.hatenablog.com

 

◆内容紹介・感想

前作と同じように、イギリスに住む一家にまつわる話。

今作は11のエピソードが綴られています。

印象に残ったいくつかエピソードを紹介し、簡単な感想を書いていきたいと思います。

 

3.ノンバイナリーって何のこと?

ノンバイナリーのところも印象的でしたが、その前のくだり、みかこさんの配偶者さんが、息子くんのテストの点数を見ての発言。

「お前には俺みたいになってほしくないから言っているんだ」。

その発言に対する息子くんが言ったこと。

「『俺のようになるな』っていってる父ちゃんも、言わてる僕も、なんだか悲しい。」

 

いやぁ、13歳の子どもにここまで言われちゃうとね。「うるせーよ」じゃないんですよねー。

ダンプ運転手だって立派な仕事じゃないか、って思うんですが。でも学歴格差が事実として拡大する今、どこの親も子供には苦労をさせたくないための「あるある」発言なんですけど。私にはわかりませんが、イギリスでのブルーカラーの地位が、日本と違うってのもあるんでしょうか?

そこまで理解していて、「自分が尊敬する親が一生懸命やっている仕事に対して卑下しないでほしい」と思うような発言なので、グッときましたね。

 

本筋からそれましたが、息子くんの学校にノンバイナリーの先生がいる話。

そういう話題に疎い父ちゃんは旧来の価値観で子供に素朴な質問をぶつけていくところが興味深いんです。

「he」や「she」って呼び方はどうすんだ、とか。(アメリカにはすでに新しい呼び名ができているそうです!)

 

私の子どもが通っている学校にもノンバイナリーの先生がいるんですよね。私は新鮮な驚きでこの話の「父ちゃん」同様興味を持ったのですが、当の子どもの感想は「怒ると恐い先生」。

固定観念がない子どもは、そんなことより「恐い先生か優しい先生か」という実に子供らしい理由で先生を見ていることに何だか嬉しくなったのでした。

 

ノンバイナリーに関しては学び続けることがとても重要だなぁと思いました。性自認から、自分の振る舞い方、性的志向まで、どこまで枠組みを外して考えるかまで。理解したつもりで、限定的な知識を固定観念化してしまうと逆に危険ですしね。

 

5.ここだけじゃない世界

イギリスでは、「ビジネス」という授業があるみたいですね。具体的には「起業」に関する実務関係の事業計画や会計知識とか。

日本においてまだまだ起業する人が少ないのは、そういうところに差があるのかな、と思ったりしました。

私が印象に残ったのはそこではなく、息子くんのお友達のティム君が、中等教育修了時にある全国統一テスト(GCSE)に向けての説明会に来なかったというエピソード。

 

複雑な家庭で暮らすティムは、「僕はこういう説明会とか関係ないから」(兄と同じように、夜の街で働くから)という。

それを聞いて息子くんは、母親や父親に相談し、ティムを説得してほしいと言い、バンドグループで孤立してしまいそうなティムにより添うシーンはグッときます。

 

「いい小学校」に行っておきながら、公立学校に進むことを選んだというのは、最終的には息子くんの決断でしたが、みかこさん自身はいつもそのことについて自問しています。

さまざまな暮らしをする子たちと一緒に暮らす今の学校には、それを超える経験ができているような気がします。みかこさん自身も。

とはいえ、親としては可能性があるなら最高の学習環境に置いてあげたい、というのももちろんある。

 

最後に息子くんに「カトリックの学校に行かなかったこと、後悔している?」と問いかけるシーンがあります。

それに対し息子くんは、考えた末に、「わからない。」と言うんですね。

これがまた、いいんですよねぇ。ちょっとは後悔もあるはずなんですが、一度しかない人生の中での考えた結果の選択を後悔したって、意味がない。もっというと、後悔してるって言うことは、今の友達を否定してしまうんじゃないか、って思う優しさでしょうかね。

これから起こることなんて、もっとわからない、そんな自分の気持ちを素直に「わからない」という言葉で表現した息子くん、さすがです。

 

こんなふうに、息子くんの身の回りでは、私のようなほとんど住み処を動いたことのない人間には想像でしかない出来事がたくさん起こります。

そのたびに親子はいろんなことを話し合い、息子くんは成長していくのです。

 

感想は以上になります!

 

では、また!