<台湾愛があふれています>
おはようございます!ちくわです。
読書・読書会・哲学カフェが好きです。
この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。
今日は、この本。
内容<amazonより>
台湾に日本の新幹線が走る! 巨大プロジェクトに、それぞれの国の人々の個々に抱いてきた想いが繋がる。確かな手触りの感動傑作!
1999年、台湾~高雄間の台湾高速鉄道を日本の新幹線が走ることになった。 台湾新幹線開発事業部に勤務する多田春香は、正式に台湾出向を命じられた。春香には大学時代に初めて台湾を訪れた6年前の夏、エリックという英語名の台湾人青年とたった一日だけすごし、その後連絡がとれなくなってしまった彼との運命のような思い出があった。
1999年から2007年、台湾新幹線の着工から開業するまでの大きなプロジェクトと、日本と台湾の間に育まれた個人の絆を、台湾の季節感や匂いとともに色鮮やかに描いた、大きな感動を呼ぶ意欲作。 「生きる感触を伝える物語の力」「国境を越える絆を描く傑作」「戦後文学の終焉、新しい感動を味わわせてくれる必読の小説」と各紙誌で絶賛された傑作長編。
◆この本は
ボリューム:★★★★☆(やや長め)
読みやすさ:★★★★☆(読みやすい)
気付き学び:★★★★☆(お仕事小説でもあります)
感動 :★★★★☆(ラストも素敵!)
台湾の新幹線建設事業に関わる春香をはじめ、おもに4人の人物の視点でそれぞれの人間ドラマが進んでいきます。それぞれが少しずつ交わってきて、そこに感動が生まれる、そんな構成がとても素敵です。作者の強い台湾愛、どこか読者に郷愁を誘ってきて、魅力的ですね。
◆内容紹介・感想
吉田修一作品らしく、視点が次々と切り替わりながら、パラレルに物語が進んでいくスタイルとなっています。
台湾名も入ってくるので、最初は各所の人物設定を自分の中に落としていくのに苦労しますが、大きくは場面は4か所、5人の視点になります。
①春香と安西
多田春香は商社の新幹線プロジェクトメンバー、春香は若手の下っ端になりますが、エネルギッシュに、しんどいながらもやり遂げていく「仕事の楽しさ」を教えてくれます。
同僚の安西誠は単身赴任中で家族とうまくいっておらず、現地のホステスのユキちゃんとのドラマがとても楽しいんです。
②葉山勝一郎
台湾生まれで戦後日本に引き揚げ、その後建設会社の重役を引退しひっそりと暮らしている老人。
彼と奥さんにとって台湾は故郷、「いつか帰りたい」と願いつつ暮らしています。
③チェン・ウェイズー
高雄生まれの青年。
彼はフリーターとしてふらふらしていましたが、カナダに行っていた幼なじみのメイチンと再会し、少しずつ変わっていくんです。
その頃、高尾には巨大な新幹線の車両基地が建設され、一念発起し整備士としての就職を目指すことに。
④リョウ・レンハオ
東京の大手建設会社に勤務する台湾人の青年。物語の根幹に関わる存在となりますので、説明は割愛しておきます。
感想
吉田修一さんの台湾愛がいたるところにあふれています。
台湾には一度訪れたことがありますが、とても蒸し暑くて、繁華街はネオンがまぶしくて、やたらスクーターが多くて、タクシーが運転は荒いが便利で、夜市はガヤガヤと楽しくて、、すごくワクワクして、どこか懐かしい気持ちにさせてくれる土地でした。
台湾は日本人にとって「郷愁を覚える」存在とよく言われるのはなんか納得できましたね。
そんな台湾が生き生きと表現されている文章がとにかく素敵なんです。
チェン・ウェイズーが勝手にメイチンの家に上がって、メイチンの母親に「あんた、夕ご飯食べたの?」と言われ、ごく自然に食卓について、その後小さい子を連れて遊んであげている、そんなシーンとか。
ひとり暮らしの春香や安西が家でご飯食べることがなく、毎日朝昼晩とその辺の食堂で食べても全く飽きさせないという、食リポも良いですね。
そして、やっぱり吉田作品ならではの人間ドラマですね~。
5人の登場人物なんですが、どの人物も、進んでいくにつれて感情移入してしまいみんな好きになっていきます。
物語は台湾新幹線の開通をもってラストとなるのですが、「最後まで読んで良かった~!」と思えるボーナスのようなラストシーンが待っています!
感想は以上になります!
では、また!