<歴史改変SFというより、群像劇>
おはようございます!ちくわです。
読書・読書会・哲学カフェが好きです。
この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。
今日は、この本。
内容<amazonより>
◆この本は
ボリューム:★★★★☆(やや長め)
読みやすさ:★★☆☆☆(ちょっと難しめ)
人間臭さ :★★★★☆(キャラを楽しむエンタメ)
歴史 :★★☆☆☆(そこは重要ではない)
もしも第二次世界大戦で枢軸国が勝っていたら?そんな歴史改変SFが繰り広げられると思いきや、それはあくまで舞台の前提であり、個性的な登場人物が織りなす群像劇なのでした。楽しく読めれば、それでよし。
◆内容紹介・感想
のっけから何度も「群像劇」と書きましたが、この本の特徴は、アメリカ西海岸を舞台に、何人かの登場人物目線でのドラマが入れ代わり立ち代わり、並行した時制を進んでいきます。
そして、それぞれが少しずつ交わりながら、ゴールに向かっていくという、割とゆるい小説であることです。
「歴史改変SF」ということで、身構えてしまいましたが、
要は、第二次世界大戦でドイツや日本といったところが勝利した前提、ということだけを頭に入れておけば、慣れるまでは違和感があるかもしれませんが、3分の1ぐらい過ぎてくると設定に頭がなじんできます。
例えば、世界の支配者はドイツで、ドイツの管理主義や人種隔離がアメリカでも浸透されようとしていたり、日本人がアメリカでのさばっていたりします。
主な登場人物は、
①ロバート・チルダン:サンフランシスコの美術商
②田上信輔:駐米の通商官僚
③フランク・フリンク:工場勤めの職人
④ジュリアナ・フリンク:別居中のフランクの妻
の4人ですが、他にもそれぞれに関係する人物が主役になる章もいくつかあります。
ロバート・チルダンは、美術商を営み、田上氏などはその客として接点があります。その扱い品をめぐり、真贋問題などのトラブルに巻き込まれていきます。
田上信輔は日本の駐米高官ということで、ドイツのこれまた高官に会わなければならないなど、大忙しの日々。彼の動きを通して、この物語の世界観やドイツ内部の勢力争いが見えてきます。
フランク・フリンクは労働者階級の職人で、技術はあるが不当に虐げられているようで、しかも会社(工場)はやばいことに手を突っ込んでいそうだと気がつき、工場をやめようか、どうしようかと悩む日々。
ジュリアナ・フリンクはフランクの妻であるという設定ですが、既に別居しておりフランクとは全く接点がなく別人としてこのドラマ内では動きます。彼女は柔道の先生をしていましたが、イタリア人の若い男と知り合い、後述の「イナゴ・・」の本とともに、行動を共にすることになります。
とまぁ、それぞれ4人とも割と別々なドラマを展開していきますが、途中でそれぞれが交わったりして、同じ時制を歩んでいるんだな、というのはわかります。
そして、この物語に登場する人物がみんな夢中に読んでいる本(作中作)、「イナゴ身重く横たわる」が非常に重要な役割を持っています。
これは、「もし第二次世界大戦で連合国が勝利したら」という歴史改変SFなんですね。
この設定がまた、面白いですよね。この物語は、そう、今の私たちが住んでいるアメリカ主導の世界なんです。これをみんな夢中になって読んでいるんです。
当然、支配側のドイツにとっては有害図書であるわけで、発売禁止になってしまい、作者である「高い城の男」には公安の手が回ってくる、、。
全体の感想としては、当初抱いていたイメージ「重い話」ではなくて、割と、人間ドラマを楽しむ全体的にゆるく楽しめる話でした。
主人公が短い章ごとにコロコロ変わるっていうのは、慣れていかないと疲れるかもしれないですが、私は人名をメモしながら読んでいったので、問題なく読み進めることができました。
※これは吉田修一小説を読んだ時に身につけた(笑)
ラスト、それぞれがどうなっていくかは、書きませんが、ドラマだけあってドタバタの急展開もあったりして楽しかったです!
感想は以上になります!
では、また!