<天才と呼ばれた親を持つと。>
おはようございます!ちくわです。
読書・読書会・哲学カフェが好きです。
この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。
今日は、この本。
内容<amazonより>
鬼才・河鍋暁斎を父に持った娘・暁翠の数奇な人生とは――。
父の影に翻弄され、激動の時代を生き抜いた女絵師の一代記。
不世出の絵師、河鍋暁斎が死んだ。残された娘のとよ(暁翠)に対し、腹違いの兄・周三郎は事あるごとに難癖をつけてくる。早くから養子に出されたことを逆恨みしているのかもしれない。
暁斎の死によって、これまで河鍋家の中で辛うじて保たれていた均衡が崩れた。兄はもとより、弟の記六は根無し草のような生活にどっぷりつかり頼りなく、妹のきくは病弱で長くは生きられそうもない。
河鍋一門の行末はとよの双肩にかかっっているのだった――。
◆この本は
ボリューム:★★★☆☆(普通)
読みやすさ:★★★☆☆(普通)
人間ドラマ:★★★★☆(周辺人物が個性的)
美術のこと:★★★★☆(絵が見たくなります)
画鬼と呼ばれた父、河鍋暁斎に5歳で絵師の道を決められ、娘とよは、逆らえないまま葛藤しながらも、自らの運命を受け入れていくさまが描かれています。
機会があれば、暁斎だけでなく、是非息子・娘の絵もあわせて鑑賞してみたいと思いました!
◆内容紹介・感想
この物語の主人公は、鬼才・河鍋暁斎の娘にして自らも絵師として生涯を送った、とよ(暁翠)になります。
物語は、明治22年、とよ22歳の時に、父・暁斎が57歳で亡くなるところから始まります。
絵師として多くの仕事を抱えていた暁斎でしたので、父の死に悲しむ暇もなく、突如として河鍋家を切り盛りすることになってしまいます。
というのも、兄、周三郎(暁雲)は絵描きとして独り立ちしていましたが、我が道を行く感じで、家業を継ぐつもりがありません。
この物語の主題は、天才画家を父に持ってしまったがゆえの、どんなに努力しても父に敵わない、とよの苦悩を描写しているところにあります。
野球選手や落語家、経営者などその例は現代でも、いくらでもあります。親の英才教育は受けて、そこそこの活躍はできますが、どうしても天才の親と比べられてしまうんですね。
しかし、折しも急速に近代化が進む日本で西洋画がブームとなり、日本画は「時代遅れ、ダサい」とのレッテルを貼られてしまい、仕事(絵の依頼)も減り、弟子も離れていくいっぽう。
それでもめげずに、とよには絵の道ひとつしかないと、暁斎の絵を受け継ぎながら、自分らしくどうあるべきか、暗中模索の日々を進みます。
この物語のもう一つの楽しみは、河鍋家の兄弟や、弟子たちが繰り広げる人間ドラマにもあります。
父の才能を色濃く受け継いだ兄・周三郎の生きざまをはじめ、彫刻家に入門した弟のイマイチエピソード、暁斎の弟子であり豪商のボンボンであった鹿島清兵衛の道楽など、サブストーリーにも事欠かないエンタメ小説になっています。
明治時代の東京の文化風俗も生き生きと描かれていて、楽しかったです。
澤田瞳子さんの、これもあわせて読んでみたいです。
感想は以上になります!
では、また!