ちくわのぴょんぴょん読書日記 ~読書・読書会・哲学カフェ

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主に読書メモ・読書会・哲学カフェについて書いています。

「弁護」 D・W・バッファ(ネタバレ:少)

<裁判における「弁護」は、「正義」とはルールが違う>

 

おはようございます!ちくわです。

読書・読書会・哲学カフェが好きです。

この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。

 

今日は、この本。

 

内容<amazonより>

裁判では負け知らず、どんな被告をも無罪にしてきた辣腕弁護士がひょんなことから引き受けた継父による少女レイプ事件の裁判。誰が見ても有罪なその父親の弁護をしたことから、事件をめぐる人々を巻き込む巧妙な犯罪計画が動き出した…。「法と正義」という重厚なテーマに挑んだ第一級のリーガル・サスペンス。

◆この本は

ボリューム:★★★★☆(厚め)

読みやすさ:★★★☆☆(意外と難しい表現も)

深さ   :★★★★☆(正義とは何かを考えさせられます)

意外性  :★★★★☆(意外な結末!)

 

裁判は推定無罪の原則なので正義とはまた違うゲームのルールがあって、そこをうまく批判したストーリーになっています。

読者も主人公でさえも、どう決着するのか読めないままラストに突入し、鮮やかな最後のどんでん返しでした。

何が正義なのか哲学的に対話するシーンも印象的でした。

 

◆内容紹介・感想

主人公のジョーゼフ・アントネッリは数々の事件を逆転無罪にしてきた敏腕弁護士。

ある依頼、義理の娘である少女をレイプした被告、ジョニー・モレルをアントネッリが無罪にするところからストーリーは始まります。

当のジョニー・モレルは犯罪の常習者で、ポリグラフでもクロ判定が出ていて、さらに周囲の人間もきっと彼が犯人だとみんな思っている。

しかしそれをジョーゼフは、検察が作った事件のストーリーの鎖の一点を上手く突いて破ってしまいます。

 

そこから事態はややこしい方向に進んでいきます。

その裁判から数年後、当のジョニー・モレルが殺され、妻のデニース・モレルが容疑者として逮捕されてしまいます。

その後もさらにもう1件、不可解な殺人が起こり、事件の行方がいよいよわからなくなってきます。

 

事件の真相も最後まで不可解なよくできたミステリーとなっていますが、この本の醍醐味はタイトルにズバリ表現されている「弁護」です。

 

裁判では推定無罪の原則が適応されることで、たとえほんとうに罪を犯していたとしても、きちんとした証拠がなくて陪審員を納得させられなければ無罪となります。

いかに、検察が作ったストーリーに弁護士が穴を開けるか。

そこに容疑者が実際にやっていた・やっていないは関係ない、というおそろしいゲームのルールが存在しているのです。

有罪・無罪を判定しているのが、法の専門家ではなく、一般の中から選出された陪審員であるところもこのゲームをややこしくしています。

 

弁護士という職業が、「正義を守るもの」というところから別な方向に行ってはいないか、という筆者の批判がこのミステリーの中に込められていました。

正義はどこにあるか、判事のレオポルド・リフキンがジョーゼフに哲学者の言葉を用いて語りかけるシーンが印象的でしたね。

 

では、また!