<「ロス」を満たしてくれた、アナザーストーリー>
おはようございます!ちくわです。
読書・読書会・哲学カフェが好きです。
この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。
今日は、この本。
内容<amazonより>
異星種属・三体文明の太陽系侵略に対抗する「階梯計画」。それは、敵艦隊の懐に、人類のスパイをひとり送るという奇策だった。航空宇宙エンジニアの程心(チェン・シン)はその船の推進方法を考案。船に搭載されたのは彼女の元同級生・雲天明(ユン・ティエンミン)の脳だった……。太陽系が潰滅したのち、青色惑星(プラネット・ブルー)で程心の親友・艾(アイ)AAと二人ぼっちになった天明は、秘めた過去を語り出す。三体艦隊に囚われていた間に何があったのか? 『三体III 死神永生』の背後に隠された驚愕の真相が明かされる第一部「時の内側の過去」。和服姿の智子が意外なかたちで再登場する第二部「茶の湯会談」。太陽系を滅ぼした〝歌い手〟文明の壮大な死闘を描く第三部「天萼」。そして――。 《三体》の熱狂的ファンだった著者・宝樹は、第三部『死神永生』を読み終えた直後、喪失感に耐えかねて、三体宇宙の空白を埋める物語を勝手に執筆。それをネットに投稿したところ絶大な反響を呼び、《三体》著者・劉慈欣の公認を得て、《三体》の版元から刊行されることに……。ファンなら誰もが知りたかった裏側がすべて描かれる、衝撃の公式外伝(スピンオフ)。
◆この本は
ボリューム:★★★★☆(厚め)
読みやすさ:★★☆☆☆(三体3を読んでいる必要あり)
なるほど感:★★★★☆(うまくスキ間を埋めている)
スケール感:★★★★★(とにかくすごい)
ひとことで言えば、「三体Ⅲ」で語られなかった部分を補完するストーリーなのですが、「本人公認」とあるように、二次創作のレベルではない完成度。
特に第3話、作中では太陽系を攻撃することになる「歌い手」に関するストーリーが凄く良かったです!
※くれぐれも、「Ⅲ」を読んでから、当作品を読んでくださいね。さもないと、さっぱり意味がわかりませんので。
◆内容紹介・感想
これは「三体Ⅲ」の続編ではありません。
宝樹というSF作家による二次創作作品であり、そこには宝樹氏のマニアックなエネルギーが全力で投入されていて、好き嫌いが分かれるかもしれないですが、自分としてはすごく楽しませていただきました!
簡単にどんなことが書かれているかというと、、
1.時の内側の過去
プラネット・ブルーに2人、取り残された、アイ・エイエイとユン・ティエンミンについてのアナザー・ストーリーから始まります。
本編のラストでは、この2人がプラネット・ブルーでどう過ごしたのかは描写されていないので、気になるエピソードではあります。
しかし、もっと大切なのは、こちらも本編で語られていなかった、三体艦隊に補足されたユン・ティエンミン(の脳)が、どういう扱いを受けた結果、約束の地であるここにやってこれたのか?です。
その壮大なエピソードがユン・ティエンミン本人から余すところなく語られていきます!
また、アイ・エイエイの意外な過去も明らかにされ、実はユン・ティエンミンとも繋がりがあったことになります(!!)
2.茶の湯会談
「三体Ⅲ」の核心である「低次元化攻撃」の背景について、壮大なストーリーを用意してくれていました。
「低次元化攻撃」は何のためになされるのか?
それを実行しようとする者と、防ごうとする者。
宇宙レベルでの壮大な戦争の様相を呈してきます!
本編でたびたび登場する、三体世界との連絡係となっていたアンドロイド「智子」による語りにより、以外な智子のモデルが判明!
3.天萼
場面はガラッと変わり、ここでは「歌い手」が主人公となります。
「歌い手」というのは、「Ⅲ」における低次元化攻撃の張本人であり、三体シリーズを通しての「暗黒森林攻撃」を司る者になります。
本作「Ⅲ」の中で語られなかった暗黒森林攻撃の内情と、さらに大きな「闘争」に巻き込まれていく「歌い手」の壮大なアナザー・ストーリーがここにありました。
この章は「X」のクライマックス・シーンであり、読みごたえ抜群です!
4.終章
「闘争」の結果、どうなったかは触れませんが、本編「Ⅲ」のラストシーン、チェン・シンが覗き見る「もう一つの宇宙」につなげてくるところはさすがです。
本編ラストはニーチェの「永劫回帰(永遠回帰)」を想起させるものでしたが、本編の伏線を上手く活用し、そこに「破れ」を試みているところは、うーん、上手いです。
5.感想
自分は宇宙科学や物理学にまったく疎いので、三体シリーズ内で出てくる理論は本当のところどうなのか、よくわかりません。(大部分の読者がそうだとは思いますが)
しかし、そのトンデモ理論をさらにブットビ理論で補強し、筋の通った物語にしてしまう力強さというものを感じました。
「三体」シリーズにすっかりハマり、「Ⅲ」の終盤を読みながら、「終わってほしくない、、」と寂しさを感じた私にとっては、このアナザー・ストーリーが救いになったことは確かです。
感想は以上です!ありがとうございました。
では、また!