みんなの日常哲学カフェ ~哲学カフェとか読書とか

哲学カフェの記録を中心に、読書記事も書いています

旧:ちくわのぴょんぴょん読書日記

「決壊」平野啓一郎①(ネタバレ中程度)

<事件をきっかけに、決壊していく家族>

 

おはようございます!ちくわです。

読書・読書会・哲学カフェが好きです。

この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。

 

今日は、この本。

 

 

 

内容<amazonより>

<上>

地方都市で妻子と平凡な暮らしを送るサラリーマン沢野良介は、東京に住むエリート公務員の兄・崇と、自分の人生への違和感をネットの匿名日記に残していた。一方、いじめに苦しむ中学生・北崎友哉は、殺人の夢想を孤独に膨らませていた。ある日、良介は忽然と姿を消した。無関係だった二つの人生に、何かが起こっている。許されぬ罪を巡り息づまる物語が幕を開く。衝撃の長編小説。

<下>

戦慄のバラバラ殺人──汚れた言葉とともに全国で発見される沢野良介の四肢に、生きる者たちはあらゆる感情を奪われ立ちすくむ。悲劇はネットとマスコミ経由で人々に拡散し、一転兄の崇を被疑者にする。追い詰められる崇。そして、同時多発テロの爆音が東京を覆うなか、「悪魔」がその姿を現した! 2000年代日本の罪と赦しを問う、平野文学の集大成。芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。

◆この本は

ボリューム:★★★★★(かなり長編)

読みやすさ:★★★★☆(難しくはないが、考えながら読んでしまう)

問いかけ :★★★★★(ずっと、問いかけが続きます)

感動   :★★★★☆(ラストまで、重苦しい)

 

<上>

主人公の沢野崇と弟の良介、良介の妻子、良介の両親。それとは別視点で登場する中学生の北崎友哉。上巻8割が事件の前提を理解するためのパート。上巻最後のほうに、殺人事件が発生して、物語が一気に動きだします。下巻へ。

<下>

殺害された良介と、直前に会っていて警察に疑われてしまう兄の崇。本当の犯人はどこに?それとも本当に崇がやったのか?「他人」という危うい存在はかくも容易にすれ違ってしまうの?と思うほど、家族が「決壊」に向かってしまう悲しいストーリーでした。

 

◆内容紹介・感想

この本は、ある程度ネタバレしない限り、感想を述べることができないと思いましたので、中程度ネタバレとしました。

 

<あらすじ(おもに前半部分)>

主人公:沢野良介:山口に住むサラリーマン、妻と小さい子どもがいる。

    沢野崇 :良介の兄。外交官を経て国会図書館で働くエリート。

    北崎友哉:鳥取の中学生。いじめを受けている。

 

少々乱暴ですが、上巻はほとんど、「決壊」というテーマにおいて、前置きといっていいと思います。

3人の主人公が、良介=山口、崇=東京、友哉=鳥取でそれぞれの別々に暮らし、その人物設定を少しずつ理解していくといった感じです。

 

良介は、平凡なサラリーマンで、他人を疑うことをあまりしないような、純朴な人物。

一方で、優秀な兄と比較されやすく兄に対してコンプレックスを持っているようです。

 

崇は、独身で彼女が複数人おり、日によって部屋にいる女性が違うという、少々女性関係にはルーズなところがあるようです。

崇は非常に頭の回転が速いがゆえに、若い頃からいろんなことを考えることができて、女性の気を惹くことに対しても、人間の心理を理解したうえで、最適な言葉を選んでその人を思うままに動かすことができるような人物です。

 

性格的には全然違うこの兄弟ですが、仲が良く、互いを疎んじているということは無いようです。

兄弟に変化が生じてくるのは、良介が家族のことをこっそりブログに書き始めたころから。良介のそのブログには家族のとりとめもないことが書かれていましたが、ちょっと不満に思ったことなども書かれていました。

それが良介の妻の目に留まり、幸せに暮らしているようだったのに、こんな不満を、自分に言うこともなくに、コソコソとブログに書くなんて、とショックを受け、義兄の崇にメールで相談します。

 

さらに、妻と崇のその秘密のメールのやり取りが、良介にとって、また誤解を招くことになってしまいます。それは、「妻と崇が浮気をしているんじゃないか」というありえない疑い(妄想)でした。

 

いっぽう北崎友哉です。

彼は鳥取の中学校に通う中学生ですが、いじめの被害者になっていて、自宅に引きこもりがちになり、加害者への殺人願望を闇のブログに書き込んでストレスを発散するようになっていました。

この北崎友哉と、沢野兄弟が交わるのはかなり先になるのですが、しばらくはこの引きこもりがちで危険な少年は別視点で話が進んでいきます。

 

沢野兄弟に変化が起こるのは、福岡の彼らの実家に、お盆に彼らが帰省した際、彼らの父に鬱の症状がでていることを発見したことを発端とします。

失意のうちに製鉄所を退職した父は引きこもりがちになり鬱を発症していたようです。

父は母に対し、病気からもありきつい言葉づかいになり、この夫婦仲がうまくいっていないのは明らかでした。

 

帰省から帰宅後、沢野崇は、例の良介のブログの問題を直接話そうと、大阪で再会することにします。

そして、ついに、その夜、事件が起こります。

崇と居酒屋で会って話をした良介が、そのあと行方不明になり、京都でバラバラ遺体で発見されるのです。

 

ここが上巻まで。本当の展開はここからスタートするのです。

警察は、最後に良介といた崇を疑うことになり、参考人として激しい取り調べを受けることになります。

話しの流れでは、北崎友哉が関与しているような感じがするのですが、マスコミやネットではさも崇がやっているような空気が作られていく。

そして、良介の妻、良介の母、父、崇、それぞれが少しずつすれ違っていく、悲しい「決壊」がここから始まっていくのです。

 

あらすじがとても長くなりましたが、ここから、感想を書いていきたいと思います。といっても、ちょっと長くなってしまったので、日を改めることにします!

 

では、また!