ちくわのぴょんぴょん読書日記 ~読書・読書会・哲学カフェ

読書・読書会・哲学・哲学カフェが好きな人間のブログ

主に読書メモ・読書会・哲学カフェについて書いています。

「むかしむかしあるところに、死体がありました。」 青柳碧人(ネタバレ少な目)

<これは売れるわ。>

 

おはようございます!ちくわです。

読書・読書会・哲学カフェが好きです。

この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。

 

今日は、この本。

 

内容<amazonより>

「浦島太郎」や「鶴の恩返し」といった皆さんご存じの《日本昔ばなし》を、密室やアリバイ、ダイイングメッセージといったミステリのテーマで読み解く全く新しいミステリ!

「一寸法師の不在証明」「花咲か死者伝言」「つるの倒叙がえし」「密室龍宮城」「絶海の鬼ヶ島」の全5編収録。
2019年、本屋大賞や多くの年間ミステリランキングに入った話題作が早くも文庫になりました!

◆この本は

ボリューム:★★☆☆☆(ライト)

読みやすさ:★★★★★(とても読みやすい)

企画   :★★★★★(とっつきやすさとネタの金脈)

構成   :★★★★☆(ミステリーの教科書のような)

 

短い話に完璧なトリックが詰め込まれ、自分のように非ミステリファンでも、教科書的構成かつ高クオリティーであることはよくわかります。誰もが知る昔話なので人物設定を理解しなくても読めてしまうところも秀逸ですね。

 

◆内容紹介・感想

この本は、日本むかし話を題材に、登場人物を使ってミステリーを創作されています。

その題材は、「浦島太郎」「一寸法師」など、誰もが知っている物語ばかり。

収録されている5話を簡単に紹介すると、

 

①一寸法師の不在証明

一寸法師は鬼と戦い姫を助け、打ち出の小槌を手に入れ、姫と結婚するところまでは原作を踏襲しますが、、

近くで、姫のお父さんである右大臣の隠し子、冬吉が殺されているのが見つかり、その容疑者として、なんと「堀川少将」となった元・一寸法師が浮上します。

この短編の主人公である江口という城仕えの武士が、このトリックをどう解明するか?

 

②花咲か死者伝言

お城の散った桜の木に、見事に花を咲かせたおじいさん、お殿様に褒美をもらいめでたしめでたし、というわけにはいかず、その4日後、おじいさんは死体で見つかりました。

おじいさんが遺したダイイングメッセージをめぐり、犯人探しが始まりますが、なかなか犯人が見つかりません。

この短編の主人公、花咲かじいさんの相棒「シロ」の後継犬「次郎」は、犯人を見つけ出すことができるか??

 

③つるの倒叙がえし

鶴の恩返しがはじまる前(鶴(つう)が来る前ですね)、プロローグにて、主人公の弥兵衛はいきなり庄屋を殺していました。

犯人が最初にわかっていて、それを探偵が追い詰めていく、古畑任三郎のような「倒叙返しミステリー」という形式です。

これ、ラストの変化が実に見事です。

 

④密室竜宮城

浦島太郎が亀の背中に載せられて訪れた竜宮城で、たまたま、イセエビの「おいせ姉さん」が死体で見つかるという殺人事件が起こります。

孤島の密室で起こった殺人事件、犯人はこの中にいる、のですが、どうやって殺したか、わからない。

しばらく浦島太郎が探偵となり、容疑者が浮上してくるのですが、、

ラストのどんでん返しと伏線の回収が見事でした。

 

⑤絶海の鬼ヶ島

最後を飾るのは、桃太郎です。

なんと舞台は鬼ヶ島で、主人公は鬼たち。人間という生き物はおそろしいもので、突然やってきて島の鬼たちを惨殺して去っていった「桃太郎と3匹の手下」の伝説が言い伝えられていました(笑)。

そんな鬼ヶ島で、ひとり、またひとりと、鬼たちが殺されていく事件が起こりました。

この中に犯人がいるはずだが、誰が??「そして誰もいなくなった」になっていくのか??

恐怖のミステリーです!

 

感想

この本がベストセラーになっていると聞き読んだのですが、なるほどよくできているな~と思ったのです。

 

謎解きミステリーとしてよくできているし、短編の一つ一つが、ミステリーの教科書のようになっています。第一話では「どうやって=ハウダニット」、第二話では「誰が=フーダニット」、第三話では「倒叙がえしミステリー」、というふうに。

 

そして、私がすごいと思ったのは、物語の題材が誰も知っている昔話であることで、登場人物の名前や属性を覚えたり、設定を把握する手間が省けるということでした。

 

私は物語の最初にこれをすることが面倒だなといつも思ってしまうので、どちらかと言うと長編を好むのですが、これはその手間を見事に省略できていますよね。

 

そして、物語はまだまだあります。続編の「赤ずきんー」や「やっぱりー」につながっていく、これはまさに企画の勝利と言ってよいのではないでしょうか。

 

とっつきやすさと、本格ミステリー、そして、すぐ終わる。

これは、ベストセラーになるべくしてなった、と思いました!

 

感想は以上です!ありがとうございました。

では、また!