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旧:ちくわのぴょんぴょん読書日記

「高瀬庄左衛門御留書」 砂原浩太朗 (ネタバレ:少)

<「はぐれ刑事純情派」みたいな感じ>

 

おはようございます!ちくわです。

読書・読書会・哲学カフェが好きです。

この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。

 

今日は、この本。

 

内容<amazonより>

◎第165回直木賞候補作◎
◎「本の雑誌」2021年上半期ベスト10で第1位!!◎

美しく生きるとは、誇りを持ち続けるとは何かを問う、正統派時代小説。
藤沢周平、乙川優三郎、葉室麟ら偉大な先達に連なる新星、ここに誕生。

神山藩で、郡方を務める高瀬庄左衛門。50歳を前にして妻を亡くし、さらに息子をも事故で失い、ただ倹しく老いてゆく身。残された嫁の志穂とともに、手慰みに絵を描きながら、寂寥と悔恨の中に生きていた。しかしゆっくりと確実に、藩の政争の嵐が庄左衛門を襲う。

人生に沁みわたり、心に刻まれる、誰もが待ち望んだ時代小説の傑作。
武家もの時代小説の新潮流、砂原浩太朗「神山藩シリーズ」第1作。

◆この本は

ボリューム:★★★☆☆(普通)

読みやすさ:★★★★☆(楽しく読めます)

謎解き  :★★★★☆(なるほど、手が込んでいます)

穏やかさ :★★★★★(「枯れた」寂しさと美しさ)

 

チャンバラあり、涙あり。時代劇を観るように、楽しく読み進めることができました。主人公の庄左衛門は江戸時代の「郡方」と呼ばれる年貢を仕切る小役人。いかにも地味ですが、この地味なおじさんが事件に巻き込まれていくところが実に楽しいです。

 

◆内容紹介・感想

感想を一言でまとめると、まるで、ひとつの長編時代劇を観ているような感じでした。

 

主人公は、タイトルにある通り、高瀬庄左衛門という人物。

50歳に差し掛かり、妻には先立たれ、もう人生においては晩年といえる年齢。

彼の職業は「郡方」という年貢を担当する小役人です。

 

時代は江戸時代。太平の世の中で、この物語の舞台になっている神山藩という場所は架空の場所ですが、読むからにかなり首都圏(?)から離れた田舎村であるように思います。

 

庄左衛門は、息子に家督を譲り、趣味の絵を描きながら悠々自適に過ごしていこうとしていた矢先に、事故でその息子を失ってしまい、老齢ながら郡方に復帰するところから物語は始まります。

 

息子の妻であった志穂という女性がこの物語では重要な存在になるのですが、彼女は夫を亡くしたので、家に戻されてしまう一方で、その趣味の絵を習いに庄左衛門の家に通っていました。

 

そんな感じで地味な主人公が、どこまでも地味な舞台において、物語は進んでいくのですが、やがて、また別の場所で、庄左衛門の旧友の息子が不慮の事故で亡くなるという出来事が起こり、はたまた藩内での一揆の噂が立ち昇ったりと、少しずつなにか、事件の匂いがしてきます。

 

それは段々と形になっていき、一つに繋がっていくのですが、それは読んでのお楽しみということになります。

 

この物語の楽しいところは、何度も書いて失礼ですが、地味な主人公がその地味さに似合わない事件に巻き込まれていくところで、それでいて遠山の金さんのように実はスーパーヒーローだったということもなく、いかにも江戸時代の武士ということで剣を巧みに使えるというわけでもありません。(一応、チャンバラシーンもあります。)

 

その地味で善人の庄左衛門の人柄によって、ミステリーを解決していくという、ほのぼのとしたところがいいんです。

そして、また彼の「枯れた」ところがまた味があっていいんです。江戸時代で50歳というと、もう人生をしまいにかかる齢です。

 

まだまだ若々しい息子の妻との対比で余計におじいちゃん臭くて、今の俳優で言うと、藤田まことさん、なんかが自分のイメージで浮かんでいました!

文章も美しくて、どこかはかなくて、時代劇なのに、「はぐれ刑事」感がありましたね(笑)。

 

楽しく読ませていただきました。

といったところで、感想は以上になります!

 

では、また!