<読者と本人は、犯人ではないと知っている面白さ>
おはようございます!ちくわです。
読書・読書会・哲学カフェが好きです。
この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。
今日は、この本。
内容<amazonより>
ある日突然、「女子大生殺害犯」とされた男。
既に実名・写真付きでネットに素性が曝され、大炎上しているらしい。
まったくの事実無根だが、誰一人として信じてくれない。
会社も、友人も、家族でさえも。
ほんの数時間にして日本中の人間が敵になってしまった。
必死の逃亡を続けながら、男は事件の真相を探る。
◆この本は
ボリューム:★★★★☆(ちょい厚め)
読みやすさ:★★★★☆(楽しく読めます)
謎解き :★★★★☆(手が込んでいます)
スリリング:★★★★☆(ネット民と逃げる主人公のスリリングな展開)
面白かったです。大学生のリツイートに始まり、主人公の中年オジサンが無実の罪に巻き込まれていくんです。拡散、炎上、特定、からの、手のひら返し、等、SNS特有の現象をうまく取り込みながらのスリリングな展開に加え、最後のネタバラシも見事でした。
◆内容紹介・感想
タイトルの「俺ではない炎上」の通りの展開になっていきます。
主人公は、住宅販売会社の営業部長である山縣泰介。
ある日の朝、「たいすけ@taisuke0701」というアカウント名のツィートで、
「血の海地獄。・・・」という、若い女性が血を流しているような写真とともに投稿されていました。
当然、殺人事件とも思えるこのツィートにネット上ではすぐに多くの人が反応し、爆発的にリツィートが増えていきます。
そこからは、「特定班」と呼ばれる、名前や家の住所、家族を割り出そうとするネット民が仕事をしていきます。
特定班がやることというのは、過去のツィートや写真から手掛かりとなる実名・地名を見つけていくという作業です。
特定班によりほどなく、このアカウント主は、山縣泰介であり、住所は大善市、職場が大帝ハウス、であることが判明します。
そうするとそこからは、それを見た人による「犯人捜し」が始まります。職場への「電話攻撃」、個人的な自宅への訪問や周辺の捜索などです。
一連のこの、拡散~炎上~特定~個人や家族・学校への攻撃、というネット特有の行為は今に始まったことではありませんが、つい直近でも、コンビニ店員による不衛生行為や、回転ずし店での調味料へのいたずら行為などで同様の炎上事件が起こっていて、それを想起させるなかなかリアルな展開となっています。
しかし、この小説の面白いところは、当の山縣泰介がSNSをしないという点であり、本人と読者は、「この人が犯人ではない」と知っているということです。
まぁ、巧みな叙述によって読者は騙され最終的には犯人でした、というケースは推理小説である以上捨てきれないですが、ひとまずそういう前提で読み進めていくことができます。
しかし炎上してしまうと、警察はいったん置いといて、一般の人は山縣泰介が犯人だとほぼ信じてしまうので、山縣泰介にとっては、すべての人が敵に思えてきて逃げるしかなくなる、ということになります。
いっぽう警察も捜査にやってきて泰介の妻、娘、お母さんに対しての事情聴取は始まります。その中でお母さんや妻は、心の底からあの人は犯人ではない、とは信じられないといった内容の発言をしたことで、警察の印象も泰介が犯人であるというほうに傾いていき、いよいよ泰介にとっては絶体絶命になっていきます。
この先、山縣泰介が犯人でないということがわかるのか?
山縣泰介が犯人でないとするならば、誰がこんな手の込んだ嫌がらせをするのか?
そして、実際に起こっている事件はどういうことなのか?
いくつもの謎が未解決のまま山縣泰介の必死の逃走劇が続いていきます。
最後にどんでん返しが待っている、ミステリーとしても非常に手の込んだ作品となっています。
といったところで、ネタバレになる前に、そろそろ終わります!
では、また!