<戦争と、揺れる若者の心>
こんばんは。ちくわです。
読書・読書会・哲学カフェが好きです。
新しい事、楽しい事は、何でも試して、失敗して、楽しんで。
今日は、昨年「ベルリンは晴れているか」でも話題になった、深緑野分さんの本です。
<内容紹介 「BOOK」データベース より>
一晩で忽然と消えた600箱の粉末卵の謎、不要となったパラシュートをかき集める兵士の目的、聖夜の雪原をさまよう幽霊兵士の正体…誇り高き料理人だった祖母の影響で、コック兵となった19歳のティム。彼がかけがえのない仲間とともに過ごす、戦いと調理と謎解きの日々を連作形式で描く。第7回ミステリーズ!新人賞佳作入選作を収録した『オーブランの少女』で読書人を驚嘆させた実力派が放つ、渾身の初長編。
◆この本の見どころ① コック兵
この本は、ジャンルで言うと、ミステリー+戦争+青春小説です。
アメリカ軍に志願した19歳の青年ティムが、1944年、フランスのノルマンディー上陸作戦で初陣を迎えるところから物語は始まります。
ティム青年は実家が雑貨屋で、食事を提供していた祖母の影響で料理好き。
そんな彼は、軍の中でも特技兵(コック)に志願します。
そんなティムが戦場で同じ仲間とともに、時には前線で、時には後方で、食事係として奮闘します。
後方支援で、食料がある時は、しっかり炊事場を設営し、あまり生鮮品はないもののしっかりとした食事を作っています。
でも、いったん兵站が途切れると、現在ある食材で何日持たせるか、食糧管理の面でもコック兵は重要な仕事をしていたようです。
コック兵の細かい描写、よほど取材されたのでしょうね。
余談ですが、物語中に何度も出てくる「レーション」というシロモノ。
何のことかと思ってネットで調べてみたら、「戦闘糧食」とのこと。
こんなのでした。
amazonで買えるようです!
中は、ビスケットや缶詰、ナッツなど、しっかり栄養補給できそうですね!
もちろん、70年前はこんないいものじゃなかったでしょうけど。
◆この本の見どころ② ミステリー
内容紹介にもありますが、道中で起こる小さな謎を、同じコック兵のエドとともに、解き明かしていきます。
詳しくは書きませんが、謎解きを通し、色んな関係者とつながりができていき、ティムやエドは部隊でもちょっとした有名人になっていきます。
◆この本の見どころ③ 戦争と揺れる若者の心
コックのくだりと謎解きは、物語に奥行きを与える要素であって、結局この作品の主題は、戦争と揺れる若者の心、だと思います。
連合国もフランス奪還やドイツに攻め入る際に、大量の犠牲を払っています。
対空砲で落とされる輸送機。包囲される部隊。切られる兵站。
ティムもコック兵といえど、普段は武器を持って普通の歩兵として戦います。
というか、ほとんど前線で戦っています。
彼の目の前で驚くほどあっけなく、大勢の連合国兵が死んでいきます。もちろんドイツ軍も同様です。
生き延びなきゃいけないという気持ちがありながらも、あまりにも間近に多くの死を見ることで、「死」に対する意識が変化していくさまを生々しく描いています。
そして、多くのかけがえのない仲間を失い、終戦。
そのとき、その後、彼は何を思ったか。
物語前半は、戦場でありながらも、どこかほのぼのとしたところがありましたが、後半は絶体絶命のピンチや仲間の死など、雰囲気が一変します。
止まらなくなること、必至ですよ。
では、また!