ちくわのぴょんぴょん読書日記 ~読書・読書会・哲学カフェ

読書・読書会・哲学・哲学カフェが好きな人間のブログ

主に読書メモ・読書会・哲学カフェについて書いています。

「ゴリラ裁判の日」①(ネタバレ:少)

<楽しく読みながら、「人間」について考える>

 

おはようございます!ちくわです。

読書・読書会・哲学カフェが好きです。

この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。

 

今日は、この本。

 

内容<amazonより>

カメルーンで生まれたニシローランドゴリラ、名前はローズ。メス、というよりも女性といった方がいいだろう。ローズは人間に匹敵する知能を持ち、言葉を理解する。手話を使って人間と「会話」もできる。カメルーンで、オスゴリラと恋もし、破れる。厳しい自然の掟に巻き込まれ、大切な人も失う。運命に導かれ、ローズはアメリカの動物園で暮らすようになった。政治的なかけひきがいろいろあったようだが、ローズは意に介さない。動物園で出会ったゴリラと愛を育み、夫婦の関係にもなる。順風満帆のはずだった――。
その夫が、檻に侵入した4歳の人間の子どもを助けるためにという理由で、銃で殺されてしまう。なぜ? どうして麻酔銃を使わなかったの? 人間の命を救うために、ゴリラは殺してもいいの? だめだ、どうしても許せない! ローズは、夫のために、自分のために、正義のために、人間に対して、裁判で闘いを挑む! アメリカで激しい議論をまきおこした「ハランベ事件」をモチーフとして生み出された感動巨編。第64回メフィスト賞満場一致の受賞作。

◆この本は

ボリューム:★★★☆☆(中ぐらい)

読みやすさ:★★★★☆(会話が多く読みやすい)

展開の意外さ:★★★★☆(急に、そうなる?)

考えさせられる:★★★★★(「人間」とはなんなのか?を問う)

 

◆内容紹介・感想

人間の言葉で会話できるゴリラが、アメリカで裁判に負けて、次はプロレスラーになって。

なかなか、ぶっ飛んだ設定のエンターテイメントである一方で、「人権」とは何か?そもそも人権を持つとされる「人間」とは何なのか?

普段当たり前に思っていることを疑う、身近な哲学のきっかけとして良い物語だと思います!

 

おおまかな物語としては、

・冒頭、アメリカでの「ゴリラ裁判」のシーン

・ゴリラのローズが「夫を殺された」と訴えるも、裁判で負ける

・時間は戻り、主人公のローズ、カメルーンでの子供の頃のシーン

・類人猿研究所の2人の研究員に、彼女は手話を教えられる

・群れを失ったローズが、母と共にアメリカの動物園に

・アメリカの動物園で群れのリーダー、オマリの妻になる

・柵から落ちた子供を助けるため、オマリが射殺される

・「ゴリラ裁判」のシーンに戻る

・失意のローズが、動物園にも戻れず、誘われるがまま、プロレスデビュー

・プロレスラーとして活躍するも、ローズ自身、「自分はこれでいいのか?」と考えるようになる

 

中盤までの流れはこんな感じになっています。

 

この本では、おもにこんなことが楽しめます。

◆ゴリラについての知識が深まる

ローズたちのカメルーンでの生活を通して、ゴリラがどのように生活しているかが勉強になります。

ゴリラが群れを作って生活しているところ。

子育てや、子どもたちの遊び。

そして、他の群れから攻撃されて、群れがバラバラになってしまうシーンもあります。

 

言葉を話せるゴリラがアメリカを騒然とさせるというエンターテイメント作品

この物語は「ゴリラ裁判」がメインとなっていますが、そもそも主人公ののゴリラ、ローズは手話を使って人間とコミュニケーションができるというSF的設定です。

そのコミュニケーションのレベルは、「高校生程度」ということで、相当なものです。当然、そんなゴリラがいるとなると、世界中で話題になり、アメリカに渡ったローズは、あっという間に動物園の人気者になります。

 

そんな中、動物園での夫を殺害されたローズが、裁判に訴えるという設定も面白いですし、その裁判に負けた失意のローズがプロレスデビューしてしまうというところがまたなかなか凄い設定です。

そして、プロレスラーとなったローズは、新しい出会いの中で、「本当に自分のやりたいこと」について考えることになる、というこれまた人間的なことを考えていくという展開になっていくところが凄いです。

 

「ゴリラ裁判」を通して「人権」とか、「人間」について考える

この物語の主題「ゴリラ裁判」については、本紹介にあるように、実際に起こった出来事、「ハランベ事件」をモチーフに物語が作られています。

人間の子供を助けるために、ゴリラを殺害していいのか?命の重みに違いがあるの?

そんな問いを、「ゴリラ裁判」という形で、ちょっと深く掘り下げてみる。

でも、そんな難しい言葉で考えず、多くの人に考えられるような言葉で表現されています。

なぜ人間だけが「人権」というもので守られ、ゴリラにはそれがないのか。

後半部分では、その「人権」の前提としてある「人間」というものの定義についても問われるという、なかなか哲学的な話になってくるので、いよいよ私の好きな話しになってきました。

 

「ネタバレ控えめの紹介」は以上です。

「ネタバレを含んだ感想」は、日を改めて書いていきたいと思っています。

では、また!