<それがその人のそもそもの持ち時間>
おはようございます!ちくわです。
読書・読書会・哲学カフェが好きです。
この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。
今日は、この本。
内容<amazonより>
◆この本は
在宅支援型の終末医療を行っている京都のクリニックを記録したノンフィクション。なんとそこで働く看護師さんに末期ガンが見つかります。そんな彼の最後の生きざまを追うとともに、過去の在宅看取りのケースも紹介され、「亡くなる人が教えてくれることの豊かさ」を知ることができました。
ボリューム:★★★★☆
読みやすさ:★★★★☆
医療の学び:★★★★★
感動します:★★★★★
◆内容と感想
京都にある訪問医療を中心におこなっている「渡辺西加茂診療所」。
そこで主力として働かれていた看護師の方。そんな彼に突然末期のすい臓がんが見つかります。
在宅医療を知り尽くし、数多くの人を看取ってきた方だからこそ、正確にに自分の予後が読めてしまいます。
しかし、数多くの人を看取ってきたからこそ、最期はみんな穏やかに旅立っていかれることも知っています。
そんな方が選んだ残された短い生涯の過ごし方は、さぞ濃密なものだったのだろうと想像しましたが、私が感じたのは実際はそんなことはなく、日々揺れ動くただひとりの人間でした。
この本でも取り上げられていましたが、エリザベス・キューブラー・ロスの「受容の5段階(否認・怒り・取引・抑鬱・受容)」を行ったり来たりする姿が印象的でした。
※受容の5段階はコチラの本に詳しく紹介されています。
途中で紹介されている、緩和医療の現状について。以前にも緩和医療の本は読んだことがありましたが、印象的だったのが「痛みは、ほとんどの場合、きちんとコントロールできます」ということ。これには「ただし、良い医師に当たれば、現状。」という注釈はつくのだろうと思います。
まだまだ緩和医療は発達途上の印象を受けますので、早く世の中にもっと広く、終末医療が整うことを祈るばかりです。
看護師さんのケースと並行して、いくつかの患者さんの看取りが紹介されています。
・約束を果たすため、亡くなる直前に、家族で潮干狩りに出かけた方
・音楽好き一家のために、自宅にプロ奏者を呼んでコンサートを企画してしまう
・小さい娘とディズニーランドに出かけた方
そんなおせっかいを、とか、看護の垣根を越えていいのか、というのは簡単ですがそんなところが、渡辺院長の理念なのでしょう。
それに関わる医師・看護師・ヘルパーさんの苦労たるや相当なものでしょうけど、もうすぐ亡くなってしまう方のために何かしたい、という気持ちと、おせっかいの結果として得られるものは何にも代えがたいものでしょう。
亡くなる人から教えられることは、ほんとうに多いです。
しかし教えてくれることは「死にざま」ではなく、あくまで「死ぬ前の生きざま」であって、それは残された人への「生きること」に対する大切なメッセージであるんです。
この本の最後、看護師さんは旅立たれるのですが、息を引き取られた朝、そこで起こったのは慟哭ではなく、なんと拍手でした。
この拍手の意味は、、。ずっと読んできたら分かります。何度思い出しても涙が出てきます、、。
すばらしい本に出会えたことに今回も感謝です!
では、また!