<ポハピピンポボピア星人だと分断してしまわない>
おはようございます!ちくわです。
読書・読書会・哲学カフェが好きです。
この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。
今日は、この本。
内容<amazonより>
『コンビニ人間』をはるかに超えた、驚愕の芥川賞受賞第一作
なにがあってもいきのびること。
恋人と誓った魔法少女は、世界 = 人間工場と対峙する。
地球では「恋愛」がどんなに素晴らしいか、若い女はセックスをしてその末に人間を生産することがどんなに素敵なことか、力をこめて宣伝している。地球星人が繁殖するためにこの仕組みを作りあげたのだろう。私はどうやって生き延びればいいのだろう――。
◆この本は
社会にうまくなじめない主人公(奈月)、同じく被害妄想的に逃げ回る夫(智臣)。
そして、小さいころ同じ感覚を共有しながら、なんとか社会のルールに従おうとしていた主人公の幼なじみの(由宇)と再会した二人がともに田舎の親せきの家で過ごすことに。そこで起こったことが、衝撃です!!
ボリューム:★★★☆☆
読みやすさ:★★★★★
衝撃度 :★★★★★
ハマり度 :★★★★★
◆内容と感想
主人公の奈月は、子どものころ家族にのけ者にされ、虐待を受け、また塾の先生に性的暴行を受けてしまいます。大人たちのいう「ふつう」には、どうしてもなれず、周囲の友達にもこの気持ちを理解してもらうことができません。
しかし毎年お盆に田舎に帰省した際にだけ会うことができる、いとこの由宇は同じ感覚を持っていて、彼にだけはこの気持ちを共有することができました。
やがて大人になった奈月は、同じように社会の価値観になじめない夫・智臣と出会い、なんとか社会の目を逃れ、ひっそりと落ち着いて暮らすことができていました。
しかし、仕事をうしなったり、家族の干渉やなんやで逃げ回る生活も行き詰まりを見せていたある日、古い田舎で由宇と再会し、智臣もまじえて3人で奇妙な共同生活を送ることに、、。
・人間工場。
社会は二つの意味で「工場」である。
ひとつは、子供を産み育て、人口を維持していくこと。(街の生殖器)
そしてもうひとつは、社会の歯車となり、世のために労働すること。(働く部品)
村田さんは大人が当たり前にやっていることや常識としていることに、ただ反対意見を表しているのではなく、それをなじめない人に対し、無自覚に「押しつけてしまう人」に対し違和感を抱いているんだと思います。
・「洗脳」されそびれた自分たちは異星人。
そして、子どももやがて大人に対して持っていた疑問も、やがて受け入れ折り合って生きていくようになる過程を「洗脳」と呼んでいます。
家族や働き方なんてものは、国や時代によって、さらに一人ひとり違ってくるのに、あたかも「これが正しい」というように多数派の「空気」に制圧されてしまう。
そこになじめない主人公のような人たちが「私たちは『異星人』なのだろうか」と疑問を持つのは、ある意味素直で真面目な人だからこその苦悩だと思いました。
・個性的な登場人物たちに触れて
「消滅世界」「コンビニ人間」を読んだ私は、良くも悪くも村田さんのテイストに耐性はついているつもりですが、やはりこのグロテスクな登場人物たちの、予測不能な言動には驚かされるばかり。
この感想の中でも私は「普通」とか「グロテスク」とかいう表現を使ってしまうところが、すでに一定程度地球星人として働いていることになるんでしょうか。
いかに日常生活の中に多く「普通」を持ち込んで、日々それを他人のものと比較し、いら立ち消耗しているのかを再認識させられます。
こういう話に触れると自分は「人間側」なのか、「異星人」側なのかという分断で物事を考えてしまう、それもなんか違うような気がします。誰しも異星人側の思いも持っているはずだし、、。
ネタバレになりますので、書けませんが、衝撃的すぎるラストシーンに開いた口がしばらくそのままになってしまいました!
では、また!