主に読書メモ・読書会・哲学カフェについて書いています。

「流浪の月」 凪良ゆう(ネタバレ少な目)

<なんで?なんで?主人公の問いが心に刺さってきます>

 

おはようございます!ちくわです。

読書・読書会・哲学カフェが好きです。

この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。

 

今日は、この本。 

流浪の月

流浪の月

Amazon

 

内容<amazonより>

2020年本屋大賞受賞
第41回(2020年)吉川英治文学新人賞候補作
せっかくの善意をわたしは捨てていく。
そんなものでは、わたしはかけらも救われない。
愛ではない。けれどそばにいたい。
新しい人間関係への旅立ちを描き、
実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。

あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい―。再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。

◆この本は

 

とにかく、素晴らしい作品でしたね。

読者によって好き・嫌いに分かれそうですが、主人公に対するもどかしさ含めて好きです。

 

ボリューム:★★★☆☆

読みやすさ:★★★★☆

文章の迫力:★★★★★

感動する :★★★☆☆

 

◆内容と感想

最初ぐらいは少しネタバレいいですかね。

 

いろんな事情が絡んでいて、説明が難しいですが、主人公の更紗(さらさ)は9歳の時父親と死別し、母親に捨てられ、親戚の家に預けられますが虐待されてしまいます。

 

家に帰りたくないと、ひとりでいた公園で出会った大学生の文(ふみ)という男の子の家に転がり込み、寝泊まりさせてもらい、匿ってもらうかっこうになるんですね。そしてその時は、特におかしな事など一切されていないんですね。

 

しかし、社会的にみてそれは「ロリコンによる少女誘拐事件」ということで、文は逮捕されあっけなく避難生活は終わってしまいます。

 

親戚の家を出て、養護施設を経て、15年の月日が経ち、更紗は仕事やそれなりに恋もしてきましたが、、。

衝撃的なゴシップニュース、そしてネット社会。過去のニュースは犯罪被害者をも苦しめます。

どこにいっても名前を知られていて、「大変な目に遭ったんだね」と好奇を含んだ同情を寄せられてしまう。

「いや、実際は違うんです」と否定し説明するのも面倒になってくる。むしろ過去の事件は事実として存在し続けていますしね。

 

でもそれは、文が逮捕された直後から、もっというと親せきに預けられた頃から、「それは違うんです!」と否定するチャンスは何度もあったんです。

でも、その度に言い出せなくて、自分の内に秘めてしまうんですね。

 

そしてそのことで事態がもっと良くない方向に向かってしまいます。

「わかって!」と心の中で叫んでも、どうにもなりません。

 

読んでいるほうからすると、「ちゃんと言わないあんたが、半分ぐらい悪い!」と、もどかしさというか、いら立ちを覚えてしまいます。

でも、そこにマスメディアの問題だとか、ネット社会とか、同調圧力だとかを絡めて考えて更紗の気持ちを理解しようとすると、わからなくもない、と胸が苦しくなってきます。

そんな気持ちを起こさせるところに、筆者の文章表現の素晴らしがあるんだろうと感じました。

 

※読書を通してこういう気持ちになりたくない!と感じる人は、この作品を嫌いと感じると思います。

 

この後、刑期を終えた文と更紗が、文がひっそり開いたカフェで再会することになるんです。

法律的には問題はないのですが、世間的には信じられないような「再会」です。

 

もちろん二人は別々の人生を歩み始めているのですが、同様に過去に一生を縛られてしまった文にとって、あの時のほんとうの気持ちはどうだったのか?

そして少しずつ明らかになっていく文の過去のこと。

 

ネタバレになりますので、これ以上は書きませんが、この物語の一番の面白さは、やはり、更紗の心情表現にあると思います。

 

どうしてわかってくれないの?私はだれに迷惑をかけたっていうの?私は何を赦されなければならないの?

 

いくつもの問いが、 心に刺さって、何とも言えない読後感(ちょっと疲れます)。

とにかく、私は、好きでした。

 

では、また!