<みんなそれぞれ、進化の途中なんだ>
おはようございます!ちくわです。
読書・読書会・哲学カフェが好きです。
この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。
今日は、この本。
内容<amazonより>
中村文則・岸本佐知子氏驚愕! 朝日、読売、東京・中日、週刊読書人他各紙で話題。日本の未来を予言する圧倒的衝撃作。
世界大戦をきっかけに、人工授精が飛躍的に発達した、もう一つの日本(パラレルワールド)。人は皆、人工授精で子供を産むようになり、生殖と快楽が分離した世界では、夫婦間のセックスは〈近親相姦〉とタブー視され、恋や快楽の対象は、恋人やキャラになる。
そんな世界で父と母の〈交尾〉で生まれた主人公・雨音。彼女は朔と結婚し、母親とは違う、セックスのない清潔で無菌な家族をつくったはずだった。だがあることをきっかけに、朔とともに、千葉にある実験都市・楽園(エデン)に移住する。そこでは男性も人工子宮によって妊娠ができる、〈家族〉によらない新たな繁殖システムが試みられていた……日本の未来を予言する衝撃の著者最高傑作。
◆この本は
私がこのブログを書き始めたころ読んだので、約3年ぶりの再読となります。その時の記事はこちら。
ボリューム:★★★☆☆
読みやすさ:★★★★☆
違和感がすごい:★★★★★
考えさせられる:★★★★★
◆内容と感想
私がサポーターとして参加させてもらっている「彩ふ読書会」。
こんどの6月から開始予定の「彩なす家オンライン読書会」にむけてのテスト読書会に参加しました。そのテスト読書会の課題本がこちらだったので再読しました。
テスト読書会の内容も掲載されているので、詳細は「彩ふ読書会」HPを参照ください!
以前読んだ時から時間が経っていましたので、文庫版も出ていまして、今度はそちらを購入してみることに。
巻末には斎藤環さんの解説もついていて、お得ですよ!
さて、再読してみての感想は、やはり、「なんか気持ち悪い」ということに尽きるんですよね。
気持ち悪さの正体を考えるにあたって、それぞれ両極端なキャラクターを考えます。
最も私たちに近いのは(少し古い考えもあるけど)、主人公の「お母さん」。
そして、一番遠いのが、最後に主人公が暮らすことになる「実験都市」の人々。
その「お母さん」と「実験都市の人々」の間には、どこに違いがあるのか、ということに思いを巡らせると、いくつかの要素が出てきます。
恋愛、結婚、セックス、出産、育児、、、
そういったひとつひとつの要素を村田さんなりに、各キャラクターの上で「外していく」試みというか、それぞれの要素が持っている価値観をつぶしていくような、そんな実験的なSF小説になっていることがわかりました。
主人公の「天音(あまね)」どちらかというと、どちらかというと古い価値観を多く持っている「お母さん」に近い存在でしたが、物語を読み進めていくにつれて、少しずつその価値観を剥ぎ取られていくような感想を持ちました。
途中に「パラレルワールド」という表現がありましたが、この物語がパラレルワールドなんですね、、。
天音の友達の中には、結婚もしない、子どももいらない、女性同士で暮らしている、
恋愛対象はアニメのキャラクターに限る、とかもあったりして、それはとても説得力があってそれぞれ「合理的」であるような気がします。
そうした各キャラクターの違いを「みんな進化の途中。」という言葉で表現されているのがとても印象的です。
唯一の「正しさ」なんてものはないし、「正しいように見えるもの」であってもすぐに変化していくもの。
この物語を読んだ自分が抱いた感想であり、多くの人が改めて考えるんだろうと思いました。
でも、しかし、、やっぱりこの「気持ち悪さ」の正体は、、?
やっぱり最大の気持ち悪さは、人間に備わっていておそらく外すことができない本能的な「遺伝子を残す」という活動、それを「合理的」という観点で無理やり引き剝がそう、としているところではないでしょうか?
こっちは合理的に考えたら「正しい」。でもあっちは本能的には「正しい」。その間の葛藤をある意味「楽しむ」のがこの小説の醍醐味なんだろうと思います。
村田さんの本をいくつも読んできましたが、これよりもっと「気持ち悪さ」を感じてしまうものはまだまだありますので、これが好きだと思った方は是非、もっと読んでみることをおすすめします!
では、また!