主に読書メモ・読書会・哲学カフェについて書いています。

「クララとお日さま」 カズオ・イシグロ (ネタバレ少なめ)

<人間とは?人格とは?問い直すきっかけ>

 

おはようございます!ちくわです。

読書・読書会・哲学カフェが好きです。

この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。

 

今日は、この本。 

 

内容<amazonより>

ノーベル文学賞 受賞第一作
カズオ・イシグロ最新作、
2021年3月2日(火)世界同時発売!
AIロボットと少女との友情を描く感動作。

◆この本は

 

ボリューム:★★★★☆(ちょっと長め)

読みやすさ:★★★★☆(読みやすい)

感動する :★★★★☆(ジーンときます)

考えさせられる:★★★★★(深いテーマが潜む)

 

ノーベル賞受賞作家、カズオ・イシグロ氏の最新刊になります。

「AIと人間との関わり」をテーマに、筆者の手腕で作り上げられた独自の世界にどっぷりとはまってしまいます!

  

◆内容紹介

子ども用に作られたAI搭載ロボットの「クララ」が主人公の物語。

物語の全文を、クララ視点で書かれています。

 

世界は近未来のアメリカ(と思います)。

AIロボットは存在するも、車などは割と普通に走っていますし、そこまでの未来ではないと思われます。

 

AIロボットであるクララは、観察力に優れ、相手の意図をしっかり汲み取って会話ができるとても優秀なアンドロイドです。 

そんなクララが、ある日、病弱の少女「ジョジー」に買われていき、自然豊かな田園地帯にある、ジョジーの家で「人工親友」として一緒に暮らしていくことになります。

 

田舎なので孤独がちになるジョジーにクララは寄り添い、良きパートナーとなり、時には忙しいシングルマザーの母親話し相手にもなり、この家にはよくなじんでいきます。

 

やがて、ジョジーの病気がじわじわ進行していく中で、母親や隣人のリック少年と協力し奮闘するクララ。

 

しかし物語が進むにつれ、雰囲気が変わってきます。

ジョジーが病気になってしまった背景と、クララがこの家に来ることになったもう一つの目的がじわじわと明らかになっていくんですね。

ジョジーの運命や、いかに。クララはジョジーを救うことができるのか?

 

◆感想

と、内容紹介はネタバレを含まない程度に書いていくとこんな感じになります。

ここからは感想ですが、やっぱりカズオ・イシグロ作品は私はとても好きだなぁということを再認識しましたね。

 

この作品は全編クララの「語り」で書かれていますが、カズオイシグロ節(これは訳者によるところも大きいと思いますが)、が絶妙にハマっているんですね。

 

どういうことかといいますと、「そういえば、こんなこともありました」というような、淡々と回想していく文体が多いんです。過去作品にも多いです。

 

それが、感情の起伏のないクララをうまく表現していて、その他の登場人物(「人間」ですね)とはっきり一線を画している、という観点で、冷静に人間を観察したものとして読み進めることができるんですね。

 

また、作品によって独特の世界を作り上げられており、その設定や独自用語をさも当たり前に使われていくので、読者からすると「?」のまま読み進めなくてはいけません。

この物語でいうと、「AF」とか「向上処置」・「クーティングズ・マシン」・「視界がボックスに分かれ・・」などが当てはまりますかね。

 

しかし、物語が進むにつれ、じわじわその意味が分かってくるんですね。

ある意味、クララと同じ目線に立って、その「?」を理解していこうか、という楽しみでもあります。(もちろん、もどかしさもあります)

 

この物語を通して、クララは全く誠実で、すべての人にとても親切です。

それがいっそう、目の前の人間の欲や嫉妬を浮き彫りにしており、それがどこか自分に突き付けられているようで、心がずっしりと重くなるところもあります。

 

そして、AIですね。技術的なところを考えるといろいろ矛盾するようなところもありますが、そのようなところは気にせず、そういうものとしてとらえましょう。

 

ざっくりと「クララは人間なのか?」と問いかけてみるだけでも、かなり多くの語れるポイントがあり、発想が広がります。

ジョジー一家であっても、「かけがえのない親友」として接しながらも、やはり人間ではない「モノ」として一線を引いているところも垣間見えて、その辺を観察しながら読むのも面白いですね。

 

ラストはじんわりと心が温まるいっぽうで、とても切なく、美しいです!最後まで読んだご褒美と言えるんじゃないでしょうか。

 

ぜひ、読書会で語り合ってみたい本。

やや長いですが、読みやすく、「問い」が好きな私にとっては記憶に残る一冊となりました。

 

では、また!