主に読書メモ・読書会・哲学カフェについて書いています。

「怒り」 吉田修一(ネタバレ:少)

<信じたいのに、揺れてしまう気持ち。>

 

おはようございます!ちくわです。

読書・読書会・哲学カフェが好きです。

この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。

 

今日は、この本。

 

怒り(上) (中公文庫)

 

 

内容<amazonより>

整形した殺人犯・山神はどこに? 房総の港町で暮らす愛子、東京で広告の仕事をする優馬、沖縄の離島へ引越した泉の前に、それぞれ前歴不詳の男が現れる。

◆この本は

 

ボリューム:★★★★★(長いです)

読みやすさ:★★★★☆(読みやすい)

ハラ&ドキ:★★★★☆(ラストにかけて)

感動   :★★★★☆(切ない)

 

この人はひょっとして、殺人犯なのだろうか?

ある殺人事件を追う刑事と並行して、それぞれに進んでいく3つのヒューマンドラマ。

 

◆内容紹介・感想

東京、八王子で夫婦を惨殺した山神という男を刑事が追っていくミステリーがこの本に一本軸を通しています。

 

しかしながら、並行して進んでいく3つのドラマはそれぞれ別々の登場人物で、全く違う展開を見せていきます。

 

・千葉の漁港

漁協に働く父・洋平と、その娘・愛子の前に現れた田代という男。

田代は事情があるとかで身元は決して明かそうとはしませんが、漁協の洋平のもとで誠実に働く中で、次第に洋子と惹かれ合うようになっていきます。

 

・東京

大手企業で働く優馬が、ゲイのクラブで出会った直人という男。

直人は働くことをせず、ただ優馬の家に居候しヒモのような生活を始めます。直人は何を考えているかわからない、まったくとらえどころのない男なんですが、日々孤独を感じている優馬にとって、直人の存在はだんだん大きなものとなっていきます。

 

・沖縄の離島

男問題で色々あって離島に逃げてきた母に、連れられてきた高校生の娘・泉。

泉が現地でできた友達の辰哉と離島から無人島へ散策行動を共にしていた中で、無人島で野宿生活していた、謎のバックパッカーの田中という男に出会います。

田中は那覇や九州で期間労働者として働き、お金がたまると野宿に戻ってくる自由な生活。そんな屈託のない田中に興味を持った泉や辰哉は打ち解けていきます。

 

この3つの物語が並行して進んでいくのですが、ここで世田谷の殺人事件、警察は公開捜査を呼びかけるTV番組で山神を特集します。

それぞれの場所にいる3人の謎の男、田代、直人、田中に、指名手配された山神の特徴がどことなく似ている、、。

TVを見た周囲の人々が、「ひょっとして、、」って思うようになります。でも、身近にいるこの男にそんな裏があるようには思えない、、。

信じたい気持ちと、まさか、と思う気持ちの葛藤の中で、彼らの間との距離に変化が生じてきます。

この3人の中の誰かが、山神なのでしょうか?

警察はじりじりと捜査の網を絞っていく中で、それぞれのドラマはどうなっていくのか??

 

ネタバレに触れずに、前半部分を中心に紹介すると、以上のような内容になります。

ここからは簡単な感想になりますが、「とにかくよくできたストーリーになっているなぁ」というのが率直な気持ちです。

 

著者自身も語っているように、物語のベースは、千葉の英会話講師を殺害し、長い間住処を転々として逃げ続けた青年のあの事件にあることは容易に想像がつきます。

そこから、3つのドラマをくっつけたところがすごいです。

 

誰が犯人か、読者にもわからない中で、読者も一緒になって登場人物の心の揺れを追体験していくところがこの小説の醍醐味になっています。

 

また、殺人事件そのものもきついですが、それぞれのストーリーの中で感じられる、例えば沖縄基地の問題とか、ゲイの身内が持つ感情とか、裏社会の話とか、日本が抱えている現代の重ための話が盛り込まれているため、それが物語に厚みを持たせて読みごたえを増しています。

 

刑事のドラマを含めて4つのストーリーを同時に体験し、それぞれの結末を並行して味わえる、ある意味贅沢な小説であるともいえますね。

 

吉田修一さん独特の、少しずつ主人公が入れ替わり、立ち替わりするストーリー展開も、テンポのよさに一役買っていて、私はそんなところも好きです。

 

「悪人」に続き、こちらも映画化されているようで、こちらも面白そうですね。

キャストが豪華すぎる!

www.toho.co.jp

 

感想は以上になります!

 

では、また!