みんなの日常哲学カフェ ~哲学カフェとか読書とか

哲学カフェの記録を中心に、読書記事も書いています

旧:ちくわのぴょんぴょん読書日記

「これはただの夏」 燃え殻 (ネタバレ少なめ) 

<普通に最悪だねって一緒に言い合えたら幸せかも。>

 

おはようございます!ちくわです。

読書・読書会・哲学カフェが好きです。

この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。

 

今日は、この本。

 

内容<amazonより>

その瞬間、手にしたかったものが、目の前を駆け抜けていったような気がした……。
「普通がいちばん」「普通の大人になりなさい」と親に言われながら、周囲にあわせることや子どもが苦手で、なんとなく独身のまま、テレビ制作会社の仕事に忙殺されながら生きてきてしまった「ボク」。取引先の披露宴で知り合った女性と語り合い、唯一、まともにつきあえるテレビ局のディレクターにステージ4の末期癌が見つかる。そして、マンションのエントランスで別冊マーガレットを独り読んでいた小学生の明菜と会話を交わすうち、ひょんなことから面倒をみることに。ボクだけでなく、ボクのまわりの人たちもまた何者かになれず、何者かになることを強要されていたのかもしれない……。

大抵の「もう遅い」は、まだ早い。 あの夏、ただ一緒に泣いてほしかったあいつに素直に会いに行けていたらなあ。 ―――――はっとり(マカロニえんぴつvo.gt)

来るとわかっている「終わり」を待つ、甘美で退屈な時間。 雨あがりのような読後感が、夏はまた来ることを教えてくれる。 ―――――岨手由貴子(映画監督『あのこは貴族』ほか)

◆この本は

ボリューム:★★☆☆☆(ライト)

読みやすさ:★★★★☆(一気読みできます)

共感   :★★★★★(世代は選びます)

しみわたる:★★★★★(名言の宝石箱)

 

これは、理屈抜きに、好きでした。普通に最悪な日々を送っていた男に訪れた、ある夏の、たった数日間のバグ。物語が終わりに近づくにつれて、夏休み終盤の小学生のような寂しさを主人公といっしょに味わいながら、読んでいました。北ウィング、いいなぁ。

 

◆内容紹介・感想

登場人物は、ほぼ4人。

ボク:テレビ番組の美術製作会社(←ブラックな職場)

大関:唯一の友人といっていい、テレビ局のディレクター

優香:とある結婚式で出会った、謎の女性

明菜:マンションのエントランスホールで出会った、10歳の少女

 

ある夏の日曜日、業界関係者の結婚式に大関さんと出席していたボクは、優香という謎の美女と出会い、二次会のあと、意気投合したのか2人は朝まで飲み明かしてしまいます。

明け方タクシーで帰ったら、マンションのエントランスに、月曜日なのに学校に行こうとしない、少女が。話を聞けば、学校に持っていく傘がない、と。ボクは前カノの傘があるので貸してあげることに。

いっぽうボクは仕事があるにも関わらず、そのまま夜まで寝てしまいます。

おなかがすいたボクは、何か食べようと外に出ると、エントランスにまた今朝の少女が。どうやら学校には行ったようですが、家に入りたくないのでしょうか?

もう一度この少女(明菜)と話しがしたくなったボクが、話しかけると、流れで一緒に目の前のモスバーガーへいくことに。そこのモスで、偶然に昨晩の美女(優香)と再会するんです。

ここから、3人の奇妙な夏の数日間がはじまりました。

 

優香は正体は謎なんですがどうやら水商売をしているようで、いっぽう明菜はそこそこ家庭環境が複雑で。

ひるがえってボクは業界の最底辺、テレビ番組のフリップやテロップを作る下請け的な美術製作会社のサラリーマン。

「普通に最悪」な3人が、偶然重なり合ったところで生まれる会話のひとつひとつが、実に「悪くない」んです。

 

燃え殻さんの小説は「ボクたちは大人になれなかった」に続きこれで2作目を読みました。1作目を読んだのがかなり前だったので忘れていましたが、主人公の職業も同じ(著者本人でしょうね)、テイストは同じ、楽しさもやっぱり同じでした。

 

では、どこが良いのか?と聞かれると、なんでしょう?

自分は関西出身なので新宿で飲んだこともないし、もちろんテレビの仕事もしたことがありません。

でも、この主人公や、その他の人物が吐き出す言葉、気持ちのいくつかに心当たりがあるから、この本のエピソードを自分が追体験することで、過去のその時の自分の気持ちを思い出している、というのでしょうか。

 

あと、主人公のボク、燃え殻さん自身の世代が、自分と同じ40代ということで、出てくる素材がすごく懐かしい、というのがありますね。

登場人物の名前が明菜や優香であったり、作中で出てくる「北ウィング」も、残業で終電が無くなる感じも、繁華街のピンク色の照明の感じも。

 

「この本から、何か大事なものを読み解く」というような気負ったところは無くて、筆者の燃え殻さん自身が伝えたかった言葉のいくつかが、ちょっとしたストーリーに仕立て上げられた、っていう感じですかね。

そういう意味では、純粋に「読書を心から楽しんだ」一冊だったかなぁと思います!

「ボクたちは大人になれなかった」も再読しようかと思います♪

 

感想は以上です!ありがとうございました。

では、また!