<世界観戦争と収奪戦争>
おはようございます!ちくわです。
読書・読書会・哲学カフェが好きです。
この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。
今日は、この本。
内容<amazonより>
「新書大賞2020」大賞受賞!
◆この本は
ボリューム:★★★☆☆(普通)
読みやすさ:★★★☆☆(難しくはないが、つらい)
気付き学び:★★★★☆(歴史を学ぶことの大切さ)
考える :★★★★☆(現代にも繋がってきます)
第二次大戦の主戦場であった独ソ戦はなぜこれほど空前絶後の被害になったのか。戦術面だけでなく、政治経済、イデオロギーの面からも総合的な分析がなされています。主戦場のウクライナはじめとする場所は70年を経た今でも緩衝地帯として翻弄され続けています。
◆内容紹介・感想
本屋大賞2022で大賞を受賞した「同志少女よ、敵を撃て」。当小説は第二次世界大戦における独ソ戦の中でも、南方戦線が舞台になっています。
また、現在のロシアによるウクライナ侵攻のニュース。この70年前の独ソ戦を学ぶことは、この戦争の背景を理解する一助になると思います。
そしてこの本自体、「2020年新書大賞(中央公論社)」を受賞しているベストセラーにもなっていて、まさに「今読むべき本」と言えるのではないでしょうか。
自分も興味を持ちましたが、まず読んだのは「ヒトラーとナチ・ドイツ」。
その時のブログ記事もあります。
どちらかというと「ヒトラーとナチ・ドイツ」はヒトラーが独裁体制を築いていくところと、そこからどう戦争に至ったのか、そしてホロコーストに至った経緯について述べられており、独ソ戦の内部についてはそこまで詳細には記されていません。
いっぽうでこの「独ソ戦」は、この戦争をドイツ側、ソ連側双方のイデオロギーや政治・経済面についてもスポットを当てた総合的な教科書といえると思います。
まずこの戦争、犠牲者の数が空前絶後です。
ソ連側の死者は戦闘員が1000万人、ジェノサイドで900万人、飢餓や疫病で800万人、合計2700万人。
ドイツ側の死者は戦闘員500万人、民間人300万人。
合計で3000万人もの人が、総人口の1割以上の死者が、戦闘だけでなくジェノサイドや捕虜虐殺が繰り広げられた人類史上最悪の戦争となりました。
どうしてここまでになったのでしょうか?
筆者はこの戦争の特徴を2つの言葉で表しています。
それが「世界観戦争(絶滅戦争)」と、「収奪戦争」です。
「世界観戦争」については、「ヒトラーとナチ・ドイツ」のほうに詳細が記されていますが、ヒトラーは東方に「ゲルマン人の土地」を広げていく計画でしたので、人種としてのユダヤ人やスラヴ人、イデオロギーとしての共産主義者はいてはいけない=絶滅させるべき存在であったということになります。
ですから、戦争で戦った兵士や奪った土地の住民は全員排除が原則ということになります。当初はまとめて遠隔地に追放ということを考えられていましたが、一気に数が増えたことでそれもままならなくなり、やがて「ジェノサイド」に発展していきました。
通常戦争であれば、戦闘が終了すれば負けたほうは撤退や投降ということになりますが、この戦争においては、ソ連兵にとってはどのみちみな殺しにされてしまうので投降できず最後までまさに死にものぐるいで戦うことに。
ソ連側にとっては、当時の不安定な政治情勢のもとでも、このドイツ軍の狂気の侵攻により、「祖国を侵略者から守る!」と国が一致団結するきっかけにもなりました。
また、国土や資源、人口など物量に勝るソ連に対しドイツがとるべき戦争は短期決戦で長期化は避けなければなりません。しかしながらこの「ソ連軍の必死の抵抗」がそれを阻んでしまうという皮肉な結果となってしまったようです。
ソ連側の死者がこんなにも多い特徴としては、「初動のまずさ」があったようです。
当時スターリン体制のもとで「大粛清」があり、有能な将校が次々と消され、戦争開始時の将校のうち7割が新人だったという信じられない軍備だったといえます。
それにより、まともな「戦略」が立てられていなかったこと。攻め込まれて不利になっても戦略的撤退・部隊の立て直しということをせずにいたずらに反撃を繰り返し、犠牲者を増やしていきました。
そこに加えて先述の「みな殺し」の原則がありましたので、最後の1人までやり合う、ということになってしまいました。
そして、「収奪戦争」です。ヒトラーにとって、形成が不利になってもこの戦争をやめることができなかった要因がここになります。
長くなってきましたので、続きは日を改めて書いていきます。
では、また!