<批判的に見ている自分を批判できるか>
おはようございます!ちくわです。
読書・読書会・哲学カフェが好きです。
この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。
今日は、この本の感想続きを書いていきたいと思います。
前回の内容はこちら。
◆ネタバレ含む感想
※これより先は、ネタバレを含みますのでご注意ください。
<衝撃のラストシーン>
なんといっても、ラストシーンですね。
「冷静な分析者」である拓人が、裏アカを使って色々と書き込んでいたことを、理香さんに指摘されてしまうシーン。
理香さんや隆良を「痛い人間」、烏丸ギンジを「寒い奴」とさんざん批判していた拓人自身が、この物語で最も「痛い人間」だったという。
最後に盛大なブーメランとなって返ってくる衝撃でしたね。
その前から、不穏な空気は漂っていました。
拓人はどうして就職が決まらないのか?そもそも拓人はどうして浪人したのか?他のメンバーと違って明確な理由がない。
朝井リョウ氏はこういう書き方が本当に上手いなぁと思います。
何かを批判的に観察することはとても大切なこと。
しかし、その批判している自分自身を批判する眼を持っていないと、それは結局同類になってしまうということ。
理香さん・隆良を批判的に見ている拓人と、拓人をさらに批判的に見ることになる読者という構図になることで、その大切なことを読者に教えているのでは、と感じました。
だから、こうやって拓人を批判的に見ている読者になった私は、さらに私のことを批判的に考えないといけなくなるのです。
拓人の観察者的行為を醜いと思ったら、その醜いと思ったのはどうしてか。それを自分に置き換えてみるとどうなのか。そもそも人間ってそんなもんじゃないのか。
理想と現実のギャップに苦しみながら、不格好にソロソロと歩んでいく、そんな人間を愛をもって表現しているんじゃないかと思いました。
理香さんも隆良も、拓人も、最終的には筆者は「応援しているよ」、と言っているように感じます。
<就職活動って>
就職活動というのは、人生の中でとても大きなイベントのひとつでありながら、やっているほうも、採用しているほうも、どこまでいっても賭けみたいなところが大きくて、人間どうしのやりとりであって、だからこそドラマになりやすいですね。
「就職活動が上手かどうか」は「人間としてどうか」と違うので、就職活動がうまくいかないからといって人間を否定されているわけではない、という話はよくされます。
でも、「就職活動が上手かどうか」は、「仕事ができるかどうか」と繋がっいる部分は少なからずあって、仕事に求められる能力に不得意がある人は人間としてダメとみなされがちです。
就活がゲームであるならば、仕事もしょせんゲームなのか?
そんな問いについて、理香さんと拓人の会話に読み取ることが出来て、深読みしていくと楽しめます。
もうちょっとネタバレ感想を続けたいので、次回はあると思います。
ひとまず今日は終わります。ありがとうございました。
では、また!