ちくわのぴょんぴょん読書日記 ~読書・読書会・哲学カフェ

読書・読書会・哲学・哲学カフェが好きな人間のブログ

主に読書メモ・読書会・哲学カフェについて書いています。

「何者」 朝井リョウ ①(ネタバレ少なめ)

<キャラ設定とその対比を楽しむ>

 

おはようございます!ちくわです。

読書・読書会・哲学カフェが好きです。

この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。

 

今日は、この本。

 

内容<amazonより>

想像力が足りない人ほど、他人に想像力を求める。

就活対策のため、拓人は同居人の光太郎や留学帰りの瑞月、理香らと集まるようになるが――。衝撃のラストが襲いかかる戦後最年少の直木賞受賞作。

就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから――。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて……。直木賞受賞作。

◆この本は

ボリューム:★★★☆☆(長編サイズ)

読みやすさ:★★★★☆(会話主体で読みやすい)

リアルさ :★★★★☆(人間観察と描写がすごい)

ズッシリ感:★★★★☆(読後は決して良くないが)

 

面白かったです。

これはキャラ設定の勝利ですね。

ストーリーはチーム「素直」vsチーム「イタイ系」の構図であるんですが、それはあくまで就活というルール上での勝敗であって、実際の人間としての評価とは異なるんですよねぇ。

しかし、ここまでイタイ子って、今時おるんやろうか?と思ってしまいましたが。

 

◆内容紹介・感想

まず、手に取った本が映画化記念 特別表紙カバーなんですよ。いやがおうにも、有村架純や佐藤健で読んでいかないといけなくなりますよ(笑)

 

しかし、この6人のキャラクター設定を自分の中に育てて、それを楽しんでいくことが、この物語の醍醐味であることは間違いないです。

 

 

主人公は「拓人」(冷静分析系男子/佐藤健)。

彼の語りによって物語は進んでいきます。

 

主役はこの写真の人たち、大学の就職活動を控えた「大学5年生」たちです。

彼らは留学などのいろんな理由から大学5年生となり、いよいよ就職、何とかしなければいけない時期。

 

拓人と光太郎(天真爛漫系男子/菅田将暉)は友人同士、ひとつの部屋に同居しています。

光太郎はずっと打ち込んでいたバンド活動をやめて、就職活動をやるぞ!というところから物語はスタートします。

 

2人の共通の友人である、瑞月(地道素直系女子/有村架純)は就職活動のために留学先のアメリカから帰ってきて、彼女の友人である、理香(意識高い系女子/二階堂ふみ)の自宅に行って、就職活動の情報交換をしはじめたところでした。

 

理香は「意識高い系女子」だけあって、履歴書もバッチリ(留学、インターン、ボランティア等々)。さらに大学の就職課にてグループディスカッション(グルディスというらしい)の練習や、OB訪問を繰り返す忙しい日々。

 

実は理香の部屋が、偶然拓人と光太郎の部屋と同じマンションにあることがわかって、やがて4人で理香の部屋に集まって、情報交換をしたり、ご飯を食べたりするようになります。

 

そして、理香の部屋にいた隆良(空想クリエイター系男子/岡田将生)は、5人目の登場人物になりますが、なんと理香と同性しているんです。

彼は、「就職活動なんてカッコ悪い、意味ない」と、どこか醒めた、ひねくれたようなことばかり言って、自分は会社に属せずフリーのクリエイターになるから、と日々中途半端な活動をしているようで、、。

 

最後の、サワ先輩(達観先輩系男子/山田孝之)だけ特殊で、拓人のアルバイト先の先輩で理系の院生なので、彼だけは就職活動を頑張らずに就職先が決まっていて、拓人の良き先輩として関わってくるという存在になっています。

 

この物語は、それぞれのキャラクターを反映したスタイルの就職活動を繰り広げることで、素直系(光太郎・瑞月)VSイタイ系(理香・隆良)の対比があって、それを拓人が冷静に眺めている、という構図を、読者が楽しむという感じになっています。

 

そして、この物語に欠かせないのが、SNS(インスタグラム・ツイッター)の存在です。彼らは会話しながらでも、いつの間にか写真を投稿し、つぶやいています。そしてそれを自然に別の人が見ている。

目の前にいるのに、目の前ではないWEB上でもやり取りをしている、二重のコミュニケーションが展開されているところが面白いんです。

 

そして、その背面のコミュニケーションであるSNSにそれぞれのキャラクターにおける特性が現れてきます。

例えば意識高い系女子の理香なんかは、SNSでは就活バリバリやって、絶対名だたる企業に就職しそうみたいな感じですが、実際は空回りばかりして全然内定をもらえていないみたいな。

 

しかしながら、就職活動って、あるルールにのっとった特殊なゲームのようであり、就活が上手い=仕事ができる=人間として優れている、という単純な数式でもない、そんなことを考えるのも面白いところです。

 

この物語の着地点はどこにあるのかと思っていたら、肝心の主人公、拓人なんですね。

彼の身に起こるできごとが、朝井リョウ作品の真骨頂。物語としてのバランスが整い、読後の余韻を長くするんですねぇ。

 

決して読後感はすっきり爽やかではないのですが、これが朝井リョウ作品の好きなところでもあります。

内容についてはネタバレになるのでこれ以上は書きませんが、ネタバレを含んだ感想も、いずれ書いていきたいと思います。

 

今日はここまで。ありがとうございました。

では、また!