彩ふ読書会の目的は「本が好きな方の居場所作り」です。
「家庭でもない、職場でもない、第三の場所」をコンセプトに、色んな価値観を持った方々が集まり、意見を交換し合うこと、また空間を共有しあうことで新しく生まれる何かを楽しもう、という集まりです。(HPより)
さて、午後の部のレポートです。
午後の部は「課題本検討会」です。
今回の課題図書は ヘルマン・ヘッセの「デミアン」。
主人公のシンクレール少年が、不思議なデミアン少年に出会い、苦悩しながら成長していく物語です。
検討会は男性5名、女性8名の計13名。
中には司書をされている方もいらっしゃり、時代背景や宗教的背景について、教授いただき大変勉強になりました。
私は今回進行役を仰せつかりました。
みなさん「難しかった」とおっしゃられていましたので(私もです)、うまくできたかどうかは、自信がありません。
この物語、主人公シンクレールの前に、デミアンが度々出現し、助けたり突き放したり議論したり、「自立した人間になる」手引きをしてくれます。
一貫しているメッセージのひとつは、「自分の人生なんだから、自分で考えて決めなさい」ということです。
他人が作った安全圏にとどまらず、自らの考えで一歩踏み出して世界を築いていくことこそ自立した大人のやるべきことと説きます。
もう一つのメッセージは、「ものごとには大概表裏があり、表の世界だけを見ていては本当のことはわからない」ということです。
デミアンはシンクレールに、批判的精神を徹底的に教え込みます。「カインとアベル」のカインに勇気の解釈を与え、また「アプラクサス」という神でもあり悪魔でもある存在を引き合いに出します。
当時絶対的な存在であったであろうキリスト教や、プラトンに対しても、多面的な考察をしているわけです。
青年時代(後半部分)は、色んな思想に対する考察が詰め込まれていて、まとまりが無くなっている、という感想もありました。
印象に残った感想は、「デミアンって、いなかったのでは」というものでした。
あまりに都合よく主人公の前に現れ、節目で導いてくれる。
ラストシーンで気が付いたら消えているし。
名作を読み込むと、多くの重要なメッセージが発掘できます。
そういった意味で、今回の課題本はとても意味のあるものとなりました。