主に読書メモ・読書会・哲学カフェについて書いています。

「塑する思考」 佐藤卓

<その付加価値、必要ですか?>

 

こんばんは。ちくわです。

読書・読書会・哲学カフェが好きです。

新しい事、楽しい事は、何でも試して、失敗して、楽しんで。

 

今日は、デザインからお仕事論へ。

塑する思考

 

 

 <内容紹介 BOOKデータベース より>

デザインの本質は、物や事をカッコよく飾る付加価値ではありません。あらゆる物や事の真の価値を、あらゆる人間の暮しへと繋ぐ「水のような」ものなのです。デザインの第一線で活躍する著者が、全身で柔軟に思考する22章。デザインを介して検証する人の営み。

 

◆「デザイン」に対するやっかいなイメージ

私が大好きなNHKの「デザインあ」という番組。

特に「解散!」というコーナーは私も娘も凄く好きで、テレビから離れられなくなります。

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そんな「デザインあ」の監修をされているデザイナーの佐藤卓氏が、「デザイン」に対する想いから、「仕事に対する心構え」についても、熱く語っています。

 

「デザインあ」や本著で著者が伝えたかったこと、

それは、「個性とは、自我を出すことではない」ということでしょう。

 

まず、「デザイン」というものについて。

「デザイナーズマンション」「デザイン家電」のような表現があります。

これに対して私なら「あまり見ない奇抜な外見をしていて、お金持ちが持っているような、」っていうイメージを持っていたりします。

 

本来デザインとは、そのものが持つ役割を軸として、材料から部品、組み合わせ方など使う人のことを最優先に考えたすべての工程のことを指すものであるはじなのに、何故か現在、「凝った・奇抜な・面白い表現」をすること、また、「この人がデザインした」というような人によって特徴的になること、そんなニュアンスをデザインが持つようになっているのです。

 

そんな考えを一旦リセットし、モノに本来備わっている「価値」を再認識してもらおうする佐藤氏の試みが「デザインあ」なのではないでしょうか。

 

◆その機能、本当に必要なの?

「付加価値」という言葉があります。

この言葉は魔法のようで、これが利益の源泉であり、付加価値を考えることが仕事そのものであるような日々を過ごしているのではないでしょうか。

 

資本主義においてこれは正しい考え方で、「差別化」とも言いますよね。

ライバル商品との違いが価値となって利益となるのです。

 

しかしそれが進みすぎた現代、とくに日本では、「誰も使わない機能満載の」ものに溢れてしまっています。

マニアックなメニューが作れるボタンがたくさんある電子レンジ。一度も食べた事の無い銘柄のお米を最適に炊ける炊飯器。

 

ごく少数の人にとっては必要かもしれないけど、大多数の人にとっては不必要な機能がつまったものが「新商品」として日々発売し、高い値段で買わされているような気がしてなりません。

 

自分にとって、自社にとっての個性を出そう出そうとして努力しているのですが、それがユーザーの求めるものから離れていってしまっている、そんな感じです。

 

◆仕事と個性

そこから筆者は「仕事と個性」について論を進めます。

「個性」というものを上述の「付加価値」というものに当てはめていきます。

 

本来仕事というものは、前工程にあるものを自分が引き継いで、後工程に渡すものです。

 

デザインであれば、発注者が描くイメージを実際の形にする作業なのですが、デザイナーの中にはそこに「自分らしさ」を入れてやろうとわざわざ考えてしまう。

 

この「わざわざ入れようとする」のが、「間違った付加価値」のようなやっかいな存在なのです。

 

「個性」ってのはそうじゃなくて、その人その人が過去の仕事の蓄積で得たものの中から自然に出てくるもので、わざわざ出そうと考えるものではない。

だから、自分は商品の役割そのものや発注者の思いに真剣に向き合っているだけでいいのだ。

ということを佐藤氏は本書を通して訴えようとしているのです。

 

◆「塑する」思考

仕事において最も大事で、社会人なら誰でも知っている言葉のひとつが「顧客視点に立って考える」です。

でも、一番大事だと分かっていても、一番できてないのも、これじゃないでしょうか。

 

タイトルに込められた「塑する」という言葉。

 

「塑性」とは、粘土のようなもので、力を加えると形が変わって、元に戻らないです。対して、ゴムのように、力を加えても元に戻ろうとするものは「弾性」といいます。

 

自己主張する力を抑え、与えられた環境に臨機応変に向かう姿勢、そんな佐藤氏の仕事観を「塑する」という言葉に込めています。

 

折に触れて以下の言葉を思い出したいです。

「その付加価値、必要ですか?」と。

 

では、また!