<AIにできないことは何なのか>
おはようございます!ちくわです。
読書・読書会・哲学カフェが好きです。
新しい事、楽しい事は、何でも試して、失敗して、楽しんで。
今日は、昨年を代表するビジネス書である、これ。。
内容<「BOOK」データベースより>
大規模な調査の結果わかった驚愕の実態―日本の中高校生の多くは、中学校の教科書の文章を正確に理解できない。多くの仕事がAIに代替される将来、読解力のない人間は失業するしかない…。気鋭の数学者が導き出した最悪のシナリオと教育への提言。
この本は、「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトを指揮し、人工知能の可能性と限界を知り尽くした数学者が語る、「未来に生きる子供たちへの提言」なのです。
◆「東ロボくん」は、どこまで賢くなったのか
筆者の新井教授は、人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」を指揮し、人工知能を搭載した「東ロボくん」を用いて、センター試験で上位20%に入るまでの得点を獲得することができました。
上位20%といえば、偏差値でいえば58ぐらいであり、MARCHや関関同立といったところであれば、合格してしまうレベル。
しかし東大となると、その遥か先です。
あと何年かすれば、合格するんじゃないの??と普通の人だったら思うところですが、教授はハッキリ言い切ります。
「これ以上は無理だ」
そして、このプロジェクトを終わりにするのです。
◆AIにできることと、できないこと
では、なぜこう言い切れるのでしょうか。
科目によって違うのですが、例えば英語。
単語やアクセント、文法といった問題は例題を積み重ねることによってある程度は解けるようですが、後半の会話や長文読解、図表やグラフとの組み合わせになると、全く歯が立たないようです。
これはどういうことでしょうか?
筆者は、これこそAIの弱点であるといいます。
コンピュータは、どこまでいっても所詮、計算機であり、出来ることは四則計算だけ。
数学の分野でで確立されている「論理」「確率」「統計」は得意だが、逆に言うと、それ以外はできない、ということなのです。
だから、それは良いか悪いかを判断できるわけではないし、
何10億の文例を読み込んでも、「パターンを覚える」ことはできても、「意味を理解する」ことは、絶対にないのです。
人間が日常的に行っているあいまいな会話、1を聞いて10を知るような学習、そして応用や柔軟性、これらがAIにはできないのです。
「AIに代替されてしまう仕事」ということで、データ入力などがあげられますが、これはコンピューターに得意なパターン化しやすい仕事ということです。
逆に「代替されにくい仕事」は、コミュニケーションを主として、学校の先生や介護・医療など、個々人に対する柔軟性・応用力が問われる仕事です。
◆決定的に「読解力」が足りない子どもたち
だからこそ、子供の頃には、無理にプログラミング教育のようなAIに代替されやすい分野の勉強を推進するのではなく、「ちゃんと読んで意味を理解する力(読解力)」を養うことが肝心であると筆者は言います。
しかしながら、筆者が主導する読解力調査「リーディング・スキル・テスト」では、中高生の読解力が致命的に落ちているといいます。
例題を紹介します。
次の文を読みなさい。
幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。
右記の文が表す内容と以下の文が表す内容は同じか。「同じである」「異なる」のうちぁら答えなさい。
1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。
この問題の中学3年生の平均正答率は55%であったそうです。
2拓なので、ほとんどランダムと変わらない正答率ということになります。
これらの結果に筆者は愕然としたそうです。
AIに代替することができる問題は解けても、AIに代替されにくい「意味を理解する」問題は解けない。まさに筆者が危機感をいただいているのはここなんです。
しかも、この「リーディング・スキル・テスト」の成績と難関大学への進学率には強い相関があるといいます。
◆最後に、感想
この本には「リーディング・スキル・テスト」の例題がたくさん載せられており、中にはこれは読解力と言うよりも、同時にある程度の知識も問うているだろうという感じもあるし、引っ掛け問題に引っかからないようにきちんと見直せば点が上がりそうな気もするし、このテストができるようになったからといって、難関大学に受かるか、AIに代替されない人間になるかというわけではありません。
そう考えてしまったところで、順序が逆なような気がするので、自分なりに読解力を身に付けるために大切な要素だと思うことを列挙すると、
・注意して文字を追うことができる
・多くの言葉や意味を知っている
・話の内容を図や表としてイメージできる
のようなことで、これは読書だけではなく、子供のころからきちんとした対話ができていることも重要なのではないかと感じます。
人に注意を向け、決めつけではなくきちんと理解しようとする姿勢、正しく伝えるように言葉を重ねる努力、そんな力ですね。
この本にはかなり残酷な未来予想図が描かれていますが、そうなったとしたら「なにがなんでも生き残り組」に留まること以外の新しい価値観がもっと広がっているとも思いますしね。
では、また!