<「自由」を求める困難と矛盾>
おはようございます!ちくわです。
読書・読書会・哲学カフェが好きです。
この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。
今日は、この本。
内容<amazonより>
逃げるか、とどまるか。極限状況で「自由」を求める人間の葛藤を描いた現代の寓話
砂丘へ昆虫採集に来た男が、女がひとり棲む穴底の家に囚われてしまう。
退屈な日常から逃げ出そうとした男が、今度は蟻地獄のような砂の世界から抜け出そうともがく……。
教養を盾に部落の人間を啓蒙しようとする男の驕りと、生活のため繁殖のために男を引き留めようとする女の業。
その対比と、しだいに砂穴での暮らしに順応してゆく男の変化をリアルに、飄々と、ときにアイロニカルなユーモアを交えて描写する人間観察の傑作。
画学生時代から安部作品を愛読してきた漫画家のヤマザキマリ氏が、「自由」や「希望」の多義性に注目しながら解説する。
◆この本は
ボリューム:★★☆☆☆(軽めです)
読みやすさ:★★★★☆(とても読みやすい)
なるほど感:★★★★★(丁寧な解説)
深まり :★★★★☆(小説をさらに味わえました)
文学作品の中で一番好きな当作品が遂に!!この作品の、あり得ない設定の寓話でありながらも、どこか自分の日常と重なる感覚の理由が、まさにここに言語化されていました。そしてヤマザキマリさんの文章、とにかく面白かったです。
◆内容紹介・感想
安部公房の名著「砂の女」は私が最も好きな文学作品のひとつ。
この本が「100分e名著」となれば、買わないわけにいきません。
しかもしかも、「テルマエ・ロマエ」のヤマザキマリさん。
紀伊國屋書店で即買いし、夢中で読んだのですが、これもまた名著でした。
60年経ってもなお新鮮味を失わないこの名作をヤマザキ氏がどう解説するか、楽しみに読み始めましたが、期待を超える面白さでした!
「砂の女」で、自分が最も印象に残ったのは、主人公の仁木順平が大切にしていた価値観である、現代的・都会的なインテリ気質というものが、蟻地獄に閉じ込められているうちに、それが変化していくさまを追っていくことでした。
しかしその「変化していく」ということを、どのような状態から、どういう風に変化していくということを、理解させてくれたのがこの本を読んだおかげでした。
「定着と流動のはざまで」の章では、「外に向かっていく自由」と「内にとどまる自由」という、この小説のメインテーマ、「二つの自由」について解説があります。
私たちにとって憧れの象徴である「自由」は、いっぽうで「自分で生き方を見つけなければならない」という、頼りなく、また時に凶暴でもあるという性質をもっています。そんな自由を安部公房は「砂」をメタファーに使い表現しているというのがこの小説のメインです。
この小説についてじぶんがおぼろげに感じていたことを、ヤマザキ氏が明確に言語化してくれていて、そうそう、それが言いたかったんだと、勝手に嬉しくなってみたりしました。
また、作中のいくつかの象徴的なシーンについて「ここはこういう背景で、ここにつながっていく」といったような丁寧な説明もあって、この小説についての理解が一層深まりました。
先ほども書きましたが、60年前というと、今と時代が大きく異なっているはずでそこを理解しないとわからない面も確かにありました。
このペーパーバックを読んで、やっぱり「砂の女」が世界中で読まれている理由がわかりました!
では、また!