ちくわのぴょんぴょん読書日記 ~読書・読書会・哲学カフェ

読書・読書会・哲学・哲学カフェが好きな人間のブログ

主に読書メモ・読書会・哲学カフェについて書いています。

「エネルギーをめぐる旅」 古舘恒介①

<とんでもなく面白い本を見つけました>

 

おはようございます!ちくわです。

読書・読書会・哲学カフェが好きです。

この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。

 

今日は、この本。

 

内容<amazonより>

資本主義、食料、気候変動…
「エネルギー」がわかるとこれからの世界が見えてくる!
火の利用から気候変動対策まで。エネルギーと人類の歴史をたどり、現代社会が陥った問題の本質と未来への道筋を描き出す。驚嘆必至の教養書。

・ヒトの脳が大きくなったのは火のおかげ
・文明の技術的発展を支えたのは森林だった
・リサイクルをしていた古代キプロスの人々
・省エネ技術はエネルギー消費を増やす?
・化石燃料資源の枯渇はいつ頃起きるのか
・110億人のための新しい豊かさの定義を探す
・自然界から「ほどほど」のテンポを学ぶ
……驚きのエピソード満載、エネルギーから読み解く文明論。

◆この本は

ボリューム:★★★★☆(やや厚め)

読みやすさ:★★★☆☆(科学や哲学で少し難しいところも)

気付き学び:★★★★★(面白いトピックが多い)

考えること:★★★★★(世界の見方が変化します)

 

これは名著!

人類の歴史をエネルギー視点で丁寧に考察していくところから始まり、現代のハイスピード化する社会を「肥大化した散逸構造」だと看破するに至ります。

万物はエネルギーでありエントロピー増大の法則に従うと考えれば確かに、腑に落ちることばかりです!

 

◆内容紹介・感想

この本は4部構成になっていて、①量の追求、②知の追求、③心の探求、④旅の目的地

となっています。

 

①「量の追求」では、人類史をエネルギー視点で読み解いていき、

②「知の追求」では、エネルギーとは何なのか、科学的追求の歴史を振り返り、

③「心の探求」では、社会や経済、宗教についてエネルギー視点から考察し、

④「旅の目的地」では、まとめと今後に向けての提言

という構成になっています。

 

筆者は長年、石油企業に勤務しながら、「エネルギーとは何か」について勉強を続けることで得た知識と、ライフワークとして続けた思索を、集大成として一冊の本にまとめたというのが、この本になっています。

まさに筆者の人生が詰まった1冊となっていて、心して読むべしといったところです!

 

「エネルギー」とは。

科学に詳しい方ならそんなの知っているよということかもしれないですが、

一般人の私にとっては、普段あたりまえに使う言葉ですが、目に見えない存在であり、説明せよと言われるとなかなかに難しい、そんな存在です。

 

内容の紹介と、簡単な感想を順番に書いていきたいと思います。

 

<① 量の追求>

このパートでは、筆者が、人類の歴史を「エネルギー視点」でたどっていくという、なかなか楽しい、歴史読み物となっています。

「サピエンス全史」や「銃・病原菌・鉄」などの読み物と重複する点もありますが、そうではないユニークな点も多くあって、読み応え抜群です。

 

ホモ・サピエンスがアフリカに発生してから、爆発的に世界中に広がり、ついには地球の支配者となった歴史を、5つの「エネルギー革命」という視点で辿っていきます。

その5つのエネルギー革命とは、

①火の利用②農業革命③蒸気機関④電気⑤化学肥料

なんですね。すでに面白そうでしょ。

 

最後の「⑤化学肥料」なんかは、へぇーそうなんだと膝をたたきましたね。

 

空気中の窒素を固定する技術「ハーバー・ボッシュ法」が発明されたことで、化学肥料が生まれた。それにより、同じ土地で何回も作物が生産できるようになった。

これって、今では当たり前のことすぎて気にも留めていないほとでしたが、確かに凄いことなんだな、と再認識(発見)したことです。

 

人類で最も早く農業革命が起こったメソポタミアの地が、今や荒れ果てた砂漠の地になっていることを考えても納得なのですが、「同じ土地で生産を続ける」ということがいかにすごいことか。

筆者は「『ハーバー・ボッシュ法』が存在しなかったら今の人類の40%はいない」と言及するほど、この化学肥料というものは革命だったといえるのです。

 

先に⑤化学肥料について触れましたが、これらのエネルギー革命はすべて、自然界における制約であり、それを人類が乗り越えたことで、さらに人口を増やしていったきっかけとなっています。

 

たとえば「④電気の利用」に関しては、「エネルギーを遠くへ運ぶ」ということを可能にしています。

それまでは動力源である河川のそばなどでしか、産業は発展しませんでしたが、電気の利用によって、遠く離れた場所に発電所を作っても、いろんな都市でそのエネルギーを活用できる。

人々の生活範囲を大幅に広げられたことになります。

 

この章には、そのほかにも、読んでいて楽しい、ものすごく興味深いトピックがたくさんあるんですね。

 

例えば、「鉄器の使用と、燃料の関係」。

ヨーロッパは鉄器の使用によって、大航海時代以降、一気に世界の覇者に登り詰めましたが、その陰で、大量の木材の消費があり、それにより多くの森林が失われたという事実です。

鉄をつくるには大量のエネルギー(温度)が必要になりますが、それを担っていたのが、大量の木材でした(確かに、そのころ石油なんてないですし、石炭では燃焼効率が悪いですし)。

鉄器を作れば作るほど、それをはるかにしのぐ森林が破壊されていったことは、少し考えればわかることですね。それに気づいたことも、この本を読んだおかげです。

先述のメソポタミアだけでなく、日本の寺社仏閣の建設においても森林が破壊され、かつての生態に二度と戻らなくなった、というようなことも起こっていたんですね。

 

また、「食品とエネルギー効率の関係」、のトピックも相当興味深いです。

トウモロコシが食料の覇者となった理由や、バイオエタノールがエネルギー効率から考えるとけっこう無駄なことをしている事実とか、牛肉を生産するのに、そのカロリーよりもはるかに多くのエネルギーを消費しているという事実とか。

 

日常生活をエネルギー視点で捉えなおしてみると、こんなにも驚きの連続になるとは。この本の最初の驚きがこの第一部になります。

 

しかし、もっと驚かされたのが、第2部と第3部での、「エネルギーとは何なのか」や、「どうして人類は拡大していくのだろう」とか、少し哲学的になってくることなのですが、これがまた、自分にとってはとんでもなく面白かったことなので、続きは日を改めて書いていきたいと思います。

 

では、また!