<有り得ないはずなのに、どこか現実味がある。>
おはようございます!ちくわです。
読書・読書会・哲学カフェが好きです。
この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。
今日は、この本。
内容<amazonより>
真っ直ぐだから怖い、純粋だから切ない。あの人のこと、笑えますか。
“普通”の可笑しみから、私たちの真の姿と世界の深淵が顔を出す。
大将とぼっちゃんが切り盛りする中華料理店とんこつで働き始めた「わたし」。「いらっしゃいませ」を言えるようになり、居場所を見つけたはずだった。あの女が新たに雇われるまでは――(「とんこつQ&A」)
姉の同級生には、とんでもない嘘つき少年がいた。父いわく、そういう奴はそのうち消えていなくなってしまうらしいが……(「嘘の道」)
人間の取り返しのつかない刹那を描いた4篇を収録、待望の最新作品集!
◆この本は
ボリューム:★★☆☆☆(短編4篇)
読みやすさ:★★★★★(文字も少なめでずんずん読めます)
違和感 :★★★★★(???ってよくなります)
意外性 :★★★★☆(ちょっと君の悪さが何とも言えないんです)
4作の短編集。
どの作品も、読後のゾワッとした感じがたまりません。
「善意」と見せかけて、その裏では、、、。
表題作「とんこつQ&A」は終始コミカルな文体なのに、登場人物から全然違うものを感じますし。2作目「嘘の道」の終わり方も凄かったです!
◆内容紹介・感想
今村夏子作品は「むらさきのスカートの女」に続いて2冊目になります。「むらさき・・」は、どことなく不穏で、独特の雰囲気があって、放っておけない魅力があふれていましたが、この作品はどうでしょうか。
タイトルからして、すでに怪しさが漂っていますが、、。
この本は4篇の短編が収録されています。
①「とんこつQ&A」
②「嘘の道」
③「良夫婦」
④「冷たい大根の煮物」
①表題作「とんこつQ&A」
「とんこつ」とは主人公の「今川さん」が働きだした中華料理店の名前です。
「とんこつ」で働きだしてからしばらくの間、わたしは「いらっしゃいませ」と言うことすらできなかった。
9時間の労働時間の内、8時間は直立不動で立ち続ける、なんてことはしょっちゅうだった。
残りの1時間は何をしているかというと、休憩をしているのだ。
え???どういうこと???
さっそく、ありえない設定ですね。
で、接客業でありながらお客さんに話しかけられないという致命的な問題を抱える「今川さん」が、この後どうしたかと言うと、「メモを読むだけなら話しかけられる」ということを発見したのです。
「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」のメモに始まり、お客さんからの「おすすめは?」に対する答えとか、「このへんにたばこの自販機ある?」に対する答えとか、次から次へとメモができていきます。
それを読んでいくことでなんとか店員としての接客ができるようになった今川さんでしたが、なんと店主の「大将」はまた新しいアルバイトの「丘崎さん」を雇ってしまうんです。
え?こんな小さい中華料理店で2人も??
そして、その丘崎さんは、なんと、
9時間の労働時間の内、8時間は壁に寄りかかってボーっとしている。
残りの1時間は何をしているかというと、休憩をしているのだ。
今川さんや、丘崎さんがどんなに働けなくても、決して責めたりせず、励まして働き続けてもらう。
そんな、お店の大将とぼっちゃんは、何を考えているんでしょう。
なぜ?どうして?疑問だらけになっていくのですが、これが今川作品。
これはこうと割り切って読み進めていくのが正解です。
そして、その先には、腑に落ちる何かがある(かもしれない)。
②嘘の道
主人公の小学生「僕」と「姉」は、あるおばあさんに公民館への行き方を尋ねられ、良かれと思って近道(抜け道)を教えたところ、そのおばあさんは途中の狭いところで怪我をしてしまい、入院してしまったことが後になってわかりました。
その時とっさに、クラスで「嘘つき少年」としていじめられている子のせいにしてしまったことで、それがバレやしないかと、ビクビクしながら過ごすきょうだいの日々がそこから始まります。
③良夫婦
主人公の夫婦「幹也」と「友加里」は、勤めていた介護関係の仕事場で知り合い結婚し、飼い犬とごく穏やかに暮らしていました。
ただ、妻の友加里には、何かとんでもないことが起こると、パニックになってしばらく固まってしまうという性質がありました。
それが災いして、ある日、ある事件が起こってしまいます。
夫の幹也のサポートでピンチを切り抜けていくのですが、その切り抜け方から、「ん??」ってなってきます。
ネタバレなしで語ると難しいのですが、とにかく、「ん??」ってなって最後はちょっと怖くなります。
④冷たい大根の煮物
部品工場で働く主人公の「木野さん(女性)」が、工場内で「お金を借りたら返さない」と噂になっている「芝山さん(女性)」に目を付けられ(?)、一緒にスーパーに行って、一人暮らしをしている木野さんのお宅に寄って、料理をして帰っていく、という文字にしてみるとまったくよくわからない展開です。
しかし、これも、よくわからないまま読み進めていくのが正解です。
最後を楽しみに読んでください。
今村夏子さんの作品は、彼女独特の世界があって、うまく言えないですが、スッキリはしなくて、かといって恐怖でもなくて、あり得ない設定であっても、どこか現実味を帯びていて、そんなところに引き込まれていくんですね。
また、他の作品も読んでみたいと思います。
以上で、「とんこつQ&A」の記事を終わりたいと思います!
ありがとうございました。
では、また!