<珠玉のエッセイ集>
おはようございます!ちくわです。
読書・読書会・哲学カフェが好きです。
この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。
今日は、この本。
内容<amazonより>
「人間とつきあうのが仕事」の演出家がずーっと考えてきた。
必要なのは「優しさ」じゃない。必要なのは相手の「事情」を理解する能力だ。
読むと誰かに話したくなる「人間」についての30の物語。
本書のベースになった原稿は、1994年10月~2021年5月に連載された「ドン・キホーテのピアス」(『週刊SPA!』〈扶桑社〉)です。
書籍化にあたり、連載の一部を加筆修正・再構成をしました。
◆この本は
ボリューム:★★★☆☆(新書サイズ)
読みやすさ:★★★★☆(エッセイ調で読みやすい)
気付き学び:★★★★☆(魅力満載のエッセイ)
人間って :★★★★☆(考えるきっかけになります)
週刊誌の連載より厳選した「珠玉のエッセイ集」と呼んでいる通り、おもろしかったです。
テーマはエッセイなのでもちろんバラバラなのですが、敢えて言うなら「所詮、皆同じ人間なんだと思って、肩の力を抜いてみましょう」というアドバイスだと思います。
◆内容紹介・感想
この本は、筆者が27年間週刊「SPA」に続けていた連載の中で、選りすぐりのものを集めた「珠玉の」エッセイ集となっています。
主に筆者の仕事である、ワークショップや蜷川スタジオでの学び、など演劇に関する記述が多いのですが、それ以外にも、今の若い人に思うこと、戦争のこと、性にまつわること、などなど多岐にわたる話題が掲載されています。
その中でも、印象に残った記事をいくつか紹介し、感想とともに描いていきます。
・「なぜ戦争は起こるのか」
筆者がラジオ番組の「戦争のこと教えて!」という特別番組で、子ども相手に電話相談室を経験したことから、戦争について書かれています。
ゲスト解説者の方が、子どもに伝えられる言葉で戦争を伝えていくことに四苦八苦している姿が書かれていました。
そのうちに「戦争が起こる理由なんて無いのね」と言い出します。
「ひとつはっきりわかる理由はね、戦争は、『今やらないと、やられる』って人々が思うから起こるんだよね」
なるほど、戦争というのは、歴史的にほとんど、資源が欲しいからとか、権力が欲しいから、という理由で起こりますが、実際の「理由」として前に来るのは、「○○の解放」とか、「民族の自立」だとかいう、なかなか抽象的で難しい概念だったりします。
そして戦争はこういう抽象的な目的が上のほうにあって進められるのですが、下のほうの兵士や市民が体験する具体的な体験は、全く異なった残酷で悲惨な体験になるという大きな食い違いが、戦争でもあります。
最後の筆者のこの言葉がとても印象に残りました。
もうすぐ、『具体的な感覚を持った人』がいなくなります。そして『抽象的な思考』で戦争を語る世代だけになります。その思考が純化された時、とてもヤバイことが起こると僕は思っているのです。
・「あなたはマインドコントロールされてないか?」
ここでは、「あさま山荘事件」から、「マインドコントロール」について論を進められています。
それから、日本中を震撼させた「オウム真理教」の事件。これらはマインドコントロールの極端な話ですが、ここから、身近にも似たようなもの、例えば不合理な組織、ルールなどに縛られて悪いことをしてしまうことはないか、というふうに話が展開していきます。
鴻上尚史氏の共著である「同調圧力」は名著だと思いますので、みなさん一度読んでほしいのですが、
日本には「同調圧力」というものが強くあって、そこには、「空気」だとか「世間」だとかいうものの存在があるということを、非常に鋭く、腑に落ちるかたちで論じられています。
立ち止まって考えること、自分はこう思う、自分はこう行動する、という「自分で考えること」のきっかけになるはずです。
と、2つほど重い話を書いてきましたが、もっとライトな話もたくさんあって、
「よくわからない国際電話の請求書が送られてきた」とか、
「美人のお姉さんだって、等しくウンチをする」
などの笑える話もありますし、
演劇人として、蜷川スタジオで学んだ話などは、とても読み応えがありました。
演劇というものは、他人の思いを想像しながら演じることなので、この「想像する」ことを日々仕事にしている鴻上さんだからこそ書ける深い内容、人間に関しての考察が楽しめました。
以上で、「人間ってなんだ」の記事を終わりたいと思います!
ありがとうございました。
では、また!