<「これは駅伝だと思いました。」>
おはようございます!ちくわです。
読書・読書会・哲学カフェが好きです。
この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。
今日は、この本。
内容<amazonより>
「この工場が死んだら、日本の出版は終わる……」 絶望的状況から、奇跡の復興を果たした職人たちの知られざる闘い 「8号(出版用紙を製造する巨大マシン)が止まるときは、この国の出版が倒れる時です」 ――2011年3月11日、宮城県石巻市の日本製紙石巻工場は津波に呑みこまれ、完全に機能停止した。 製紙工場には「何があっても絶対に紙を供給し続ける」という出版社との約束がある。 しかし状況は、従業員の誰もが「工場は死んだ」と口にするほど絶望的だった。 にもかかわらず、工場長は半年での復興を宣言。 その日から、従業員たちの闘いが始まった。 食料を入手するのも容易ではなく、電気もガスも水道も復旧していない状態での作業は、困難を極めた。 東京の本社営業部と石巻工場の間の意見の対立さえ生まれた。 だが、従業員はみな、工場のため、石巻のため、そして、出版社と本を待つ読者のために力を尽くした。 震災の絶望から、工場の復興までを徹底取材した傑作ノンフィクション。
◆この本は
ボリューム:★★☆☆☆(やや軽め)
読みやすさ:★★★☆☆(震災の記述は苦しいが)
気付き学び:★★★★☆(紙について、知らないことばかりでした)
感動 :★★★★★(汗と涙の奮闘記)
すごい話です。
これを軽々しく奇跡と呼んではいけないです。
石巻工場全員が無事だったこと、それからわずか半年での復旧。
津波来襲時とその夜の生々しい描写に泣き、その後の職員の方々の「日本の出版を守る!」汗と涙の奮闘に、また泣かされました。
◆内容紹介・感想
この本は、印刷用紙の国内ナンバーワンである日本製紙の主力工場である石巻工場が、2011年3月のあの震災を受けるところから始まり、そこからどうやってこの工場を復旧させていったかのノンフィクションとなっています。
まず、この本の大きな特徴として、記述の前半の大部分を3月11日の「あの日」の記録に割かれているところです。
日本製紙石巻工場は、臨海型の立地で、その広大な敷地がほとんど海岸のすぐ近くで、震災当日も、津波の被害をまともに受けました。
そんな石巻工場で、震災当日働いていた従業員1306名全員が無事であったことはものすごいことだ思いますし、その詳細が記録されていることだけでも価値があるものです。
地震発生から津波到達まで時間があったことはじめ、そこには偶然もいくつかあったかとは思いますが、津波を想定した日ごろの避難訓練があったからこそのこの結果だったと思いました。
しかし、従業員の方々からのインタビューをもとにした、当日の夜の記述は壮絶なものです。沈んでいく車、流れていく家、助けられない人、、。
また、その後数週間の被災者としての日々についても、なかなか壮絶なものがあります。特に、発生直後の寮周辺でのトイレ問題、津波で流されて腐った製品の「巻取」回収が印象的でした。
本の後半は、壊滅的なダメージを受けた石巻工場を、わずか半年で復旧させるという絶望的にチャレンジングな目標に向かって奮闘する記録となっています。
工場長はその半年という無茶ともいえる復旧期限をなぜ設定したのか。その意味を考えることが、同時に「出版業界のいま」を学ぶことになりました。
「今は大変な時だから」と、出版社は待ってくれるし、他の製紙会社も助けてくれている。海外の顧客からも理解を得られている。
しかし、それが1年、2年と続いてしまえば、日本製紙からの供給が途絶えている中での取引体制が変わってしまい元に戻ることは難しくなってしまいます。
さらに従業員のモチベーションについても触れられていました。とにかく復旧作業はつらい仕事ばかりです。ただでさえ、自分家も被災している方々が、さらに仕事で極限ともいえる疲労の中で復旧作業を続けられるのも限度があります。
まずは電気、そしてボイラー、そして次は、、。なんとか次の部門にタスキをつながねば、この責任感で切り抜けてきた数々のピンチ。
そして無謀とも思えた半年復興が、現実のものとなった、8号マシンの通紙の瞬間。
これは涙なしでは読めなかったです。あまり美談にばかりしてはいけないとは思いますが、これは感動しました。
この本は震災とその復興がメインテーマとなっているノンフィクションでしたが、同時に製紙業界について、そしてその厳しい現実も知ることが出来ました。
そして、この本をはじめ、普段当たり前に読んでいる本の「紙」について、興味と愛着がわきました!
以上で、「紙つなげ!彼らが本の紙を造っている」の記事を終わりたいと思います!
ありがとうございました。
では、また!