<自分の一番大切なものを差し出すということ>
おはようございます!ちくわです。
読書・読書会・哲学カフェが好きです。
この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。
今日は、この本。
内容<amazonより>
誠の心、勇気、努力。
大勢の乗客の命を救うため、雪の塩狩峠で自らの命を犠牲にした若き鉄道員の愛と信仰に貫かれた生涯を描き、人間存在の意味を問う。
結納のため、札幌に向った鉄道職員永野信夫の乗った列車は、塩狩峠の頂上にさしかかった時、突然客車が離れて暴走し始めた。声もなく恐怖に怯える乗客。信夫は飛びつくようにハンドブレーキに手をかけた……。明治末年、北海道旭川の塩狩峠で、自らを犠牲にして大勢の乗客の命を救った一青年の、愛と信仰に貫かれた生涯を描き、生きることの意味を問う長編小説。
◆この本は
ボリューム:★★★★☆(やや厚め)
読みやすさ:★★★★☆(読みやすい)
気付き学び:★★★★☆(他人のために尽くすとは)
感動 :★★★★★(聖人です)
すごい話です。
一番大切にしているものを、他人に捧げることができる。
父母や妹、そしてふじ子を通じて、信夫はキリストの教えと出会い、ラストの自己犠牲に繋がっていきますが、
信夫が自分自身との対話によってその価値観を育てていく様子こそが、筆者の強いメッセージと感じました。
◆内容紹介・感想
この本は、1909年、北海道の塩狩峠にて実際に起こった鉄道事故であり、それを身を挺して列車を止めた出来事を基にフィクションとして書かれた小説です。
なので、結末は既に知っていてそこの衝撃はないのですが、そこまでの経緯、主人公の永野信夫が10歳の頃から物語は始まり、殉職するまでの約20年間の物語で、信夫がどういう経緯でキリスト教に身をささげることになったのか、そして永野が学んだキリスト教の教えとはどんなものだったのかを知ることが出来ます。
永野信夫の父と母、そして妹は揃ってキリスト教信者でした。
明治時代、キリスト教は異教として差別される存在でした。当の信夫は、祖母に育てられた家庭環境により、父母がキリスト信者とは知らずに育ちましたが、祖母の没後、家族4人で暮らすことになり初めて家族がキリスト信者であることを知ります。
毎日曜に教会へ行き、食事の前に祈り、と、今までの祖母との暮らしとの違いに衝撃を受けるとともに、亡くなった祖母のことを軽んじている気持ちになり信夫はキリスト教に対し、良い印象を持つことができず、むしろ反発して、「将来はお坊さんになりたい」などと言ったりします。
しかし、そんな信夫をよそに、家族はせっせとキリスト信者として精進していきます。ある日、信夫が熱病に襲われた時は、母の寝ずの看病と、妹の献身的な気持ちに、信夫が心を打たれるというエピソードがありますが、感動しました。
妹の待子が熱心に祈り、信夫が治癒したあかつきには彼女のいちばん大切にしていたぬいぐるみを感謝とともに信夫に差し出すシーンです。
キリスト信者は、「いざという時は自分の最も大切にしているものを、ためらいなく差し出すことができる存在だ」と気付いた信夫の感動が、ラストまでつながるこの物語のキーメッセージになっているように思います。
その後、信夫の親友となる吉川、そしてのちの婚約者となる吉川の妹ふじ子との出会いがあります。吉川は、家庭の事情から北海道に移住、若くして父を失った吉川はそれでもめげずに鉄道に就職。
この吉川とふじ子の存在が、のちに信夫も北海道に移住させる大きな原動力になっていきます。
ヒョロヒョロでもの思いがちな信夫とは違って、ポジティブで生命力あふれる吉川の存在に惹かれ、また、足が不自由でありながらこちらもポジティブで可憐なふじ子に、やがて信夫は心惹かれていきます。
信夫の北海道での出来事は後半部分になり、この物語のクライマックスへとつながっていきますが、長くなってきますので、続きは日を改めて書いていきます。
では、また!