<若さゆえ、だけではない、どうしようもない「危うさ」>
おはようございます!ちくわです。
読書・読書会・哲学カフェが好きです。
この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。
今日は、この本。
内容<amazonより>
施設で育った刑務官の「僕」は、十八歳のときに強姦目的で女性とその夫を刺殺した二十歳の未決囚・山井を担当している。一週間後に迫る控訴期限が切れれば死刑が確定するが、山井はまだ語らない何かを隠している――。どこか自分に似た山井と接する中で、「僕」が抱える、自殺した友人の記憶、大切な恩師とのやりとり、自分の中の混沌が描き出される。
芥川賞作家が重大犯罪と死刑制度、生と死、そして希望と真摯に向き合った長編小説。
◆この本は
ボリューム:★★☆☆☆(少なめ)
読みやすさ:★★★☆☆(暗い場面もあり)
危うさ :★★★★☆(とても危うい)
感動 :★★★★☆(静かな感動)
彼らの中には、自分では抑えきれない多くの「危うさ」を感じます。
死刑囚の少年と、刑務官「僕」とのコミュニケーションが主線になっていますが、
その「僕」が回想する「施設長」の回想シーン、そしてその言葉の「強さ」が印象的でした。
◆内容紹介・感想
刑務官の「僕」は、「山井」を見ています。
山井は、18歳の時、会社員夫婦を殺し、死刑判決を受けました。
山井は、14日間の控訴期限が過ぎたら、死刑が確定します。
山井を見ていると、施設で育てられた自分に重ね合わせてしまう。
そして、どうしても忘れられない、同じ施設にいてで自殺した親友。
そして、親友が遺したノート。
彼らを通して感じるのは、若さからの「危うさ」もありますが、その抑えきれない衝動の背景には、彼らの育ってきた環境があり、親の愛情を充分に受けてこなかったことが関係している、と感じました。
それでも、「僕」が時々思い出す「施設長」の強い「言葉」。
「自殺と犯罪は、世界に負けることだから。」
「人生は、その人間がやってしまった事を見逃すことはない。」
「僕」の中に刻まれている、この施設長の言葉の数々は、もういいやって自棄になる衝動を爆発させないのに何度も助けになっています。
しかし、この言葉があまりに強く(光量が強いとでも言うように)、その言葉に逆に押しつぶされそうになる、そんな葛藤も感じるんです。
強くなきゃいけない、だから、刑務官になった。でもその仕事がよけいに、「弱い自分ではいけない」という圧力を強めているように思います。
自分が持つ、どうしようもない「弱さ」と逆にどう付き合っていくか、彼はまだまだ若い。
そして、もっと若い「山井」との対話でお互いに気付くことがあったのでしょう。
短く感想を書くというのは難しい、本になるのですが、青年の「危うさ」を感じること、それが入り口になるのかなと思います。
以上で、「何もかも憂鬱な夜に」の記事を終わりたいと思います!
ありがとうございました。
では、また!