<『押すなよ、押すなよ。』は、どうでしょうか。>
おはようございます!ちくわです。
読書・読書会・哲学カフェが好きです。
この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。
今日は、この本。
内容<amazonより>
私たちは会話を通じて何を伝え、何を企んでいるのか。
あるいは相手の心理や行動にどんな影響を及ぼそうとしているのか。
気鋭の言語哲学者が、『ONE PIECE』や『鋼の錬金術師』などの人気の
フィクション作品を題材に、「会話」という営みを徹底分析!
コミュニケーションとマニピュレーションという二つの観点から、
会話という行為の魅力と、その中身をわかりやすく解き明かす。
◆この本は
ボリューム:★★★☆☆(新書サイズ)
読みやすさ:★★★★☆(実例がとにかくわかりやすい)
楽しさ :★★★★★(フィクションの楽しみ方を再発見)
気付き学び:★★★★★(実生活にきっと役立つ)
面白かったです。普段何気なく使っていることも多いですが、人間の会話というものは、かくも高度な技術の複合型であることもわかりますね。
小説や漫画を題材にしていて、文章のタッチこそ軽いですが、内容は実に科学的で興味深いものでした。
◆内容紹介・感想
この本、そこそこ堅そうな題名の新書ですが、表紙の帯がなんと、
「うる星やつら」のラムちゃんとあたる君。
ラムちゃんが「一生かけて言わせてみるっちゃ。」と言えば、
あたる君が「いまわの際に言ってやる。」と言い返す。
説明に、「ラムちゃんとあたるは『好きだ』と言わないことで、互いに何を伝えているのか?」とあります。
これが、どう哲学だというのでしょうか?
この本の中身は「会話を哲学する」という題名の通り、会話というものをを科学的に掘り下げていっています。
それもそのはず、筆者は言語学者なので、「会話を哲学する」専門家だったんですね。
そして、論文らしく、第一章に、「会話とは・・・」と、まとめから大胆に入っていきます。
会話とは、ひとまず、「言葉を使って互いに影響を与え合う行為」と定義されます。
そして、影響を与え合う会話には、「コミュニケーション」と「マニピュレーション」という側面があります。
※但し、この言葉は筆者独自の分類/名称となります。
まず、「コミュニケーション」は、「約束事の積み重ね」であり、
次の、「マニピュレーション」は、「相手の心理や行動を変化させようとする行為」と説明されています。
「コミュニケーション」においての、「約束事の積み重ね」とは、
イメージで言うと、よく言われる「キャッチボール」とはちょっと違って、「互いにテーブルにカードを置いていく」行為のように思えます。
会話とは、それまで出し続けてきたすべてのカードが前提になっていて、前に出したカードを無しにすることができません。
例えば、誰かの噂話をしていて、その人が「浮気で離婚歴がある」という情報が誰かから出てきたら、その後の会話にずっとそれが影響してしまいます。
政治家が差別的な言葉を発した後「発言を撤回します」と言ったとて、それは言っていないことにはなりません。
いっぽう、「マニピュレーション」は、これは、「言外に意味をにおわす」という感じでしょうか。
ダチョウ俱楽部の「押すなよ、押すなよ。」は、コミュニケーションとしては、「押してはいけない」と言っていますが、ここでのお約束としては、「押してください」という意味なので、マニピュレーションで正反対のことを言っているということになるでしょうか。
また、コミュニケーション=主音声、マニピュレーション=副音声として考えればわかりやすいです。
ここまでが大前提となります。
いよいよ、第2章以降、コミュニケーションとマニピュレーションのさまざまなケースについて、「うる星やつら」はじめ、豊富な事例、それも身近な漫画や小説を使って説明されていきます。
先ほどの「うる星やつら」の会話の例は、「わかりきったことをそれでも言う」の章に出てくるのですが、ラムちゃんからあたる君には「ダーリン大好き」といつも言っているにも関わらず、あたる君は絶対ラムちゃんに「好きだ」とは言いません。
どうしても「好きだ」という約束事を作ろうとしない、そこがこの漫画のキャラの面白いところなのですよね。
まだまだ続きますが、
続きは、日を改めて書いていきたいと思います。
では、また!