<なんでも話して。聞かないけど。>
おはようございます!ちくわです。
読書・読書会・哲学カフェが好きです。
この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。
今日は、この本の感想続きを書いていきたいと思います。
前回の記事はこちら。
◆感想続き
「ああ、ロミオ様!あなたはなぜ、ロミオ様でいらっしゃるの?」
という、「ロミオとジュリエット」の有名なセリフが引用されています。
これは、家同士の仲が悪いことを、誰もいないところで恨む、ジュリエットの独り言ですが、これをたまたまロミオが聞いてしまいます。
ロミオが聞いてしまった事で、ただの独り言だったのが「2人の間の約束事」となってしまい、2人が家を捨てて一緒になろうと行動してしまい、その後の悲劇につながっていきます。
これは、何も起こらない独り言が、コミュニケーションが成立してしまったがために、約束事として働いてしまった悲劇の例として紹介されています。
だれかの陰口は、陰口である限り当人との関係に影響を及ぼさないですが、いったんその人の耳に入ってしまうと、その時点で約束事となり人間関係終了の恐れがあるのと同じでしょうか。
「なんでも話して。聞かないけど。」
これは、漫画の「しまなみ誰そ彼」
からの引用なのですが、
そこで登場する謎の人物、「誰かさん」のセリフということで紹介されています。
この「誰かさん」に向かって、主人公のたすく君がゲイであるというアウティングを行うのですが、この、聞くだけで何も話さない「誰かさん」という存在であるからこそ、重大な打ち明け話ができるという解釈です。
最初の「なんでも話して、聞かないけど。」というコミュニケーションで、「聞こえているけど、聞かない」という約束事を作っておくことで、生身の人間に誰にも話せないことを言えるというこのやり取り、すごく気に入りました。
これは、ペットに話しかける、神社で誰もいない空間に向かってお願い事をする、そんなシーンに少し似ているのですが、人間に向かって話しているという点では、教会の懺悔にも似ているでしょうか。
「だめだ、しきたりは守らなければならない。しかしもちろんぼくがうしろを向いている間にだれかがコッソリ持っていったとしてもそれはぼくの関知するところではない。」
これも私の印象に残った引用です。
漫画「パタリロ!」
で、主人公のパタリロが、友人に「親を救いたいので、先祖代々のダイヤを貸してほしい」と頼まれたとき、国王の立場ではそれはできないと断りながらも、発したセリフです。
これは、コミュニケーションとしては、持っていくことは許さないという約束事が成り立っているのですが、文脈から、「うしろを向いている間にコッソリ持っていけ」というメッセージを発していることが読み取れます。
これが、副音声である「マニピュレーション」といえるということです。
パタリロの例はまだ、誰にでもわかるマニピュレーションだとは思いますが、
もっと高度なところで言うと、もはや都市伝説にもなりつつある、
京都の「お茶漬けでもどうですか?」や「ええ時計してはりますなぁ。」に通じるところがあるのでは、と思いました。
この他にも、「ONE PIECE」、「オリエント急行の殺人」、「めぞん一刻」、「鋼の錬金術師」、「同志少女よ、敵を撃て」などの名作より引用された、コミュニケーションとマニピュレーションの例によって、会話をどんどん哲学(科学)していっており、楽しく読んで、深く学べるなかなか良い本だと思います!
以上で、「会話を哲学する-コミュニケーションとマニピュレーション」の感想を終わりたいと思います。
では、また!