みんなの日常哲学カフェ ~哲学カフェとか読書とか

哲学カフェの記録を中心に、読書記事も書いています

旧:ちくわのぴょんぴょん読書日記

彩ふ読書会(大阪)23年9月に参加しました②

<「想像の外」を想像することの難しさと>

 

おはようございます!ちくわです。

読書・読書会・哲学カフェが好きです。

この何だかよくわからない人生に問い続け、その「わからなさ」を日々味わって楽しんでいきたいです。

 

今日は、昨日に引き続き、「彩ふ読書会」参加レポートの続きです。

iro-doku.com

 

昨日の記事はこちら。

chikuwamonaka.hatenablog.com

 

第1部終了後、一旦外出し昼ごはんを食べてから、再度会場に戻りこの後の第2部「課題本読書会」に参加しました。

 

「課題本読書会」は、一冊の本が課題本としてあらかじめ設定され、その本の感想を参加者が語り合うという読書会になります。

 

今回の課題本は、朝井リョウさんの「正欲」。

 

この本は、私は現時点での朝井リョウさんの最高傑作だと思っていまして、当ブログにも、長々と感想を書いていたりします。

chikuwamonaka.hatenablog.com

 

ということで、私も思い入れの強い作品ですので、是非、他読者の方々の意見も聞いてみたいと興味津々で参加しました。

 

今回の参加者は、主催の「のーさん」含めて12名(たぶん)。6名ごとに2テーブルに分かれて進められました。

私のテーブルは6名、テーブルの進行役は過去にも参加されていたことのある方が事前に指名されていたようで、今回進行を務められていました。

テーブルは参加者は男女半々で、若い方から、熟年の方まで年齢層もいい感じにばらけている印象でした。

 

この本は、「多様性」という言葉が頻繁に登場し、性的嗜好であったり少々センシティブで重い内容となっているのですが、それでもテーブルのメンバーの方々が皆さん良く読んでおられ、しっかり意見されてすごいなぁと思ったことが率直な感想でした。

 

最初に時計回りで、それぞれ1分ほどの自己紹介タイムがあり、課題本読書会はスタートしました。

まず、順番に、大まかな感想や、印象に残った点を2~3点話していき、1周したところで、フリートークという流れになっていました。

 

主な意見を箇条書きで紹介します。

※ここから先は、内容のネタバレを多分に含みますのでご注意ください。

 

・不登校になった泰希は、何を言っても否定されてしまい、読んでいてつらくなる

・人とのつながりはやっぱり大切だと思った

・表紙のカモのイラストの意味が気になった

・ばらばらの境遇の人たちが、うまく繋がっていく

・章のつなぎ目で、韻を踏んでいて、文章が巧み

・人間の嫌な部分、不快になるようなところの、文章表現が実にうまいと思った

・「多様性」という言葉が持つ欺瞞を感じる

・八重子が最後に「ちゃんと話そうよ」という着地点に、希望を感じた

・キャラクター設定の巧みさ。脇役との対比で際立つキャラクターの個性。

・マイノリティ当事者側の「ほっといてくれよ」と周囲の「受け入れる」との摩擦

・「普通」という言葉が持つ危険性を感じた

・マイノリティの中でもさらにマイノリティを取り上げたことの意味

・寺井啓喜が振りかざす「正しさ」がしんどい

・八重子が陥っている苦しさは、ある意味自己責任では?

・話そうと言いながら「めんどくさいなぁ、もう!」というぶった切り方はどうか

・食欲と睡眠欲は裏切らない、ということはないのでは

・ここにある特殊嗜好が、もし家族とか近い人であったら自分はどう思うか

・子育てにおいて、「普通」を与えたいという気持ちは確かに存在する

・自分は「加害者側である」という思いが強まる

・自分の価値観、自分の普通を押し付けているということに、自分は気付きにくい

・大きな流れに従っていたほうがいい、という、寺井啓喜の気持ちもわかる

・いざ自分の子が不登校になったら、プレッシャーをかけてしまわないだろうか

 

以上のように、皆さんなかなか深く読まれていて、また、個人的経験を踏まえての感想などは興味深いものがありました。

 

フリートークで印象に残った部分は、神戸八重子のキャラクターについて。

私は彼女の自身のなさに共感するところもある思いましたが、彼女のキャラクターが嫌いだと思ったという意見も多く、どんなところが嫌いだと思ったか、という部分で盛り上がりました。

 

また、この「水に興奮する」という特殊な性癖をこの物語の核に据えたところについても話が盛り上がりました。

これは、「知られている」マイノリティではなく、誰もが想像できないだろう設定であって、他人にとって残酷でないところが絶妙な設定であると思いました。

これがもし、もっと残酷な特殊性癖に置き換えてみたら、と考えを広げられる部分も残していたのでは、と思います。

 

というわけで、話は盛り上がりあっという間に予定の1時間が過ぎて、主催による中締めのあと、自由解散となったのですが、もう少し延長戦となりまして、そこではさっきよりくだけたディスカッションとなって、これも楽しかったです。

 

こうやって、他の方の意見を聞くことも、「自分では想像できないこと」を想像するたのヒントにもなっていると感じました。

じっくり他の方の意見を聞くことで、さらにこの本に関しての興味が深まりました。

彩ふ読書会と、参加メンバーの方に感謝ですね。

 

この後、第3部「ボードゲーム会」もあったのですが、この日は私はこれにて終了です。

 

以上で、第2部のレポートを終えると同時に、9月「彩ふ読書会」のレポートを締めたいと思います。

ありがとうございました。

 

では、また!